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福岡家庭裁判所 昭和62年(少)328号 決定

少年 N・K(昭46.11.7生)

主文

少年を初等少年院に送致する。

理由

(非行事実)

第1少年は、

(1)  A(昭和47年2月28日生)と共謀の上、昭和61年1月14日午後7時30分ころ、福岡県糟屋郡○○町○○××番地の×所在のB方車庫内において、同人所有の原動機付自転車1台(時価約5万円相当)を窃取し、

(2)  同月27日午前0時30分ころ、同町○○××番地の×所在のC方敷地内において、同所に駐車中の普通乗用自動車から同人管理のラジオ1台、ステレオカセットレコーダー1台、ヘッドホーン2個及びナンバープレート1枚(時価合計約3万8000円相当)を窃取し、

(3)  同年2月16日午後6時40分ころ、同町○○××番地の×所在のD方車庫内において、同人所有の原動機付自転車1台(時価約2万円相当)を窃取し、

(4)  同年3月上旬ころ午後5時ころ、同町○○××番地所在の同町立○○中学校視聴覚準備室において、同校校長E管理のステレオアンプ1台(時価約7万円相当)を窃取し、

(5)  同月19日午前3時ころ、同町○○××番地の×所在のF方敷地内において、同人所有の原動機付自転車1台(時価約3,000円相当)を窃取し、

(6)  同月31日午前3時ころ、同町○○××番地の××所在のG方車庫内において、同人所有の原動機付自転車1台(時価約10万円相当)を窃取し、

(7)  同年4月10日ころ午後4時30分ころ、同町○○××番地所在の同町教育委員会○○会館駐車場において、同所に落ちていた所有者不明の現金3,000円及びギフト券27枚(株式会社○○発行。額面合計金1万3,500円相当)を発見し、これを自分の物にするつもりで拾い取って横領し、

(8)  同月15日午前3時ころ、同町○○××番地所在のH方車庫内において、同人所有の原動機付自転車1台(時価約8万円相当)を窃取し、

(9)同年5月21日午前3時30分ころ、同町○○××番地の×I方前路上において、同女が同所に駐車して保管していた同女所有の原動機付自転車1台(時価約8万円相当)を窃取し

たものである。

第2少年は、J(1971年10月15日生)及びK(昭和46年7月16日生)と共謀の上、

(1)  昭和62年1月3日午後10時50分ころ、福岡県糟屋郡○○町○○××番地所在のL方敷地内において、同人所有の軽四輪貨物自動車1台(時価約40万円相当)を窃取し、

(2)  同月4日午前4時45分ころ、同県太宰府市○○××番地所在のM方駐車場内において、Nが同所に駐車して保管していたO所有の軽四輪貨物自動車1台(時価約40万円相当)を窃取し、

たものである。

(適用法令)

第1(1)、第2(1)(2)について 各刑法60条、235条

第1(2)(3)(4)(5)(6)(8)(9)について 各同法235条

第1(7)について 同法254条

(処遇の理由)

1  少年は、昭和61年8月18日福岡家庭裁判所において上記第1の非行により初等少年院に送致され、同月20日福岡少年院に収容されたものであるが、同年10月6日福岡高等裁判所により同決定を取消・差戻され、再度福岡家庭裁判所に送致されたもので、当裁判所は、同日少年の身柄を釈放し、同年11月18日少年を家庭裁判所調査官の観察に付する措置を執った。

2  少年は、家庭に帰されて約1か月間は遅刻も早退もなく登校し(ただし、授業中はほとんど居眠りしていた。)、夜間の外出もなく過ごしていたが、同年11月中旬ころから緊張が緩み、次第に怠学、夜遊びなどするようになり、遅刻も頻繁に目立つようになって、遂に冬休みに入って生活を崩し、不良交友と無断外泊を繰り返した挙句、夜遊び中上記第2の各自動車盗の非行に及ぶに至った。

ところで、当裁判所は、少年が上記第2の非行に及んだとの報告を受け、昭和62年1月7日審判を開き、事情を聴取するとともに少年に訓戒を与えた上、試験観察を続行する措置を執ったところ、少年は同月中旬ころまでは遅刻しながらもなんとか登校を続けていた(ただし、学校内で喫煙したり、注意した教師に暴言を吐いたりし、また、いわゆる番長グループの使い走りをさせられている状態であった。)ものの、やがて怠学を繰り返すようになり、同月下旬ころからは全く登校しなくなって、昼夜逆転した生活に陥り、毎日のように不良交友と夜遊びを繰り返すようになった。そして、同年2月14日未明、夜遊び中不良交友とともに単車盗の所為に及ぶに至った。

3  上記第2の自動車盗の非行も上記単車盗の所為も、いずれも少年が主導的になって敢行したものではなく、非行に及んだ経緯や少年の役割等に照らしても、少年の非行性がそれほど深化しているとはいうことができない。

しかしながら、少年が試験観察に付された3か月余りの期間緊張感の全く欠ける生活を送っていたことや、試験観察の終わりころには著しく生活態度を崩していたこと、そして、結局これら再非行に及ぶに至っていること、更には、保護者もこの間有効適切な方策を示すことができず、十分な保護能力に欠けること、現在中学校卒業を間近に控えながら将来の見通しが全くたっていないこと等に鑑みると、少年の現時点における要保護性は極めて高いといわなければならない。

4  少年は、保護者の養育態度の不備から適切なしつけや社会的訓練ができておらず、年齢に比して自我や社会性の発達はかなり未熟である。また、学業不振による知的劣等感が強く、学校不適応に陥りがちで、規範意識やけじめの内面化も不十分なため、不良交友に影響されてついつい社会規範を逸脱する傾向がある。すなわち、少年の持つ資質上の問題点はかなり大きく、こうした問題が本件係属中の少年の行状にも如実に現われているということができる。

5  したがって、上記認定の本件非行の内容、態様のほか、以上のような本件係属中の少年の行状、その底にある少年の資質、環境上の問題等に照らすと、この際少年を初等少年院に収容保護して基礎的学力と基本的生活習慣を身に付けさせ、少しでも社会生活に適応していけるだけの自我や社会性の発達を促すことが、少年の健全育成のため、必要かつ相当と思料される。

よって、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項、少年院法2条2項を適用して、主文のとおり決定する。

(裁判官 松並重雄)

〔編注〕 原審(福岡家 昭61(少)728号、2056号、2411号 昭61.8.16 初等少年院送致決定)

抗告審(福岡高 昭61(く)69号 昭61.10.6 取消差戻決定)

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