大判例

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福岡高等裁判所 昭和61年(う)702号 判決

主文

原判決を破棄する。

被告人を懲役八年に処する。

原審における未決勾留日数中三三〇日を右刑に算入する。

理由

本件控訴の趣意は弁護人山本紀夫提出の控訴趣意書に、これに対する答弁は検察官林信次郎提出の答弁書に各記載のとおりであるから、これらを引用する。

右控訴趣意第一(事実誤認)について。

しかしながら、原判示第一及び第二の事実は、原判決挙示の関係証拠によつて優に肯認することができる。以下、所論に鑑みその説明を加えることする。

一  原判示第一事実について。〈省略〉

二  原判示第二事実について。〈省略〉

以上のとおりであるから、原判示第一事実及び第二事実に関する被告人の自供に信を措きこれらに依拠して原判示第一事実及び第二事実を認定した原判決は正当であり、その他所論に鑑み、さらに原審記録を精査し、当審における事実取り調べの結果を併せ検討してみても以上の結論を左右するに足らず、原判決に所論のような被告人の自白の信用性に関する評価を誤り、ひいては事実を誤認した違法は存しない。論旨は理由がない。

職権調査について。

ところで、職権をもつて原判決の法令適当の当否を検討すると、原判決は本件について刑法四五条の適用を誤つているものと認められるので、以下これを説明する。

原判決は、確定裁判の項において「被告人は、昭和六〇年一月二二日、熊本簡易裁判所で窃盗罪により懲役一〇月(三年間保護観察付執行猶予)に処せられ、右裁判は同年二月六日確定した」と判示したうえで、法令の適用の項において、原判示第一の罪と右確定裁判のあつた罪とが刑法四五条後段の併合罪、これとは別個に原判示第二の罪と第三の罪とが同法四五条前段の併合罪であるとして被告人に対し原判示の二個の主文を言い渡している。しかしながら、未だ確定裁判を受けていない数個の罪のうちの一個について禁錮以上の刑に処する確定裁判があると、刑法四五条後段によりその確定裁判を経た罪とその裁判確定前に犯した一個または数個の罪とは併合罪となるから、この裁判確定前に犯した罪のうち一部についてさらに禁錮以上の刑に処する確定裁判があつても、後者の確定裁判は前者の確定裁判の併合罪の一部について後に裁判が確定したことを意味するだけで、新たに同法四五条でいう確定裁判となる、すなわち、併合罪の数を決する基準となるものではないと解すべきである。これを本件についてみるに、原審で取調べ済みの検察事務官作成の前科調書、調書判決書の謄本、判決書の謄本によれば、被告人は昭五九年一〇月二五日玉名簡易裁判所で窃盗、同未遂罪により懲役八月に処せられ、右裁判は同年一一月九日確定しているところ、原判示の確定裁判を経た罪は同年一〇月二五日午後一〇時五〇分ころ、同月二六日午前零時ころ、同日午後一〇時過ぎごろの各犯行にかかるものであり、右の同年一一月九日確定の確定裁判前に犯された同確定裁判を経た罪の余罪にほかならないことが明らかであるから、右確定裁判以後の各犯行である本件が何個の併合罪になるかを決するにつき原判示の確定裁判は何らの関係をもたないものであり、本件は一個の併合罪として処断すべきであるにもかかわらず、原判決が原判示の確定裁判を本件について併合罪の数を決める基準として取扱い、原判示のように被告人に対し二個の主文をもつて処断したのは誤りであるといわなければならない。

以上のとおりであつて、原判決は本件を処断するについて刑法四五条の適用を誤つたものというべく、この誤りは判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、控訴趣意第二(量刑不当)について判断を加えるまでもなく、原判決はこの点において全部破棄を免れない。

そこで、刑事訴訟法第三九七条一項、三八〇条により原判決を破棄し、同法四〇〇条但書により、さらに次のとおり判決する。

原判決の認定した各事実に法令を適用すると、原判示第一の所為中、建造物侵入の点は刑法一三〇条前段、罰金等臨時措置法三条一項一号に、窃盗の点は包括して刑法二三五条に、非現住建造物等放火未遂の点は同法一一二条、一〇九条一項に、原判示第二の所為は包括して同法一〇八条に、原判示第三の所為は同法二六一条、罰金等臨時措置法三条一項一号にそれぞれ該当するところ、原判示第一の建造物侵入と窃盗及び非現住建造物等放火未遂との間にはそれぞれ手段結果の関係があるので、刑法五四条一項後段、一〇条により結局以上を一罪として最も重い非現住建造物等放火未遂罪の刑で処断することとし、所定刑中原判示第二の罪につき有期懲役刑を、原判示第三の罪につき懲役刑をそれぞれ選択し、以上は同法四五条前段の併合罪であるから、同法四七条本文、一〇条により最も重い原判示第二の罪の刑に同法一四条の制限内で法定の加重をした刑期の範囲内で被告人を懲役八年に処し、同法二一条を適用して原審における未決勾留日数中三三〇日を右刑に算入することとし、原審及び当審における訴訟費用については刑事訴訟法一八一条一項但書を適用して被告人に負担させないこととする。

(量刑の理由)〈省略〉

よつて、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官生田謙二 裁判官坂井宰 裁判官陶山博生)

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