大判例

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福岡高等裁判所宮崎支部 昭和29年(ラ)7号 決定

抗告人 丸田フミ

相手方 江口サト

主文

原審判を取消す。

本件審判申立を棄却する。

理由

本件抗告申立の要旨は抗告人は未成年者江口二郎の実母であつて親権者であるが原審においては抗告人が江口二郎の親権者としての義務を果していないとの理由で右二郎に対する親権の喪失を宣告した。しかしながら抗告人は元来本籍地で右二郎を養育していたところ訴外丸田富夫と結婚し肩書住居に出稼するに際し相手方の懇望により二郎を相手方の手許に残し二郎の監護養育を相手方に依託したのである。しかして抗告人は相手方に対して住居を秘匿したこともなくその他親権を濫用したようなことは全くない。しかるに原審においては右は抗告人が親権を濫用したものであるとなしその喪失を宣告したことは失当であるというにあるところ記録についてみると抗告人がその夫と共に出稼ぎして二郎の扶養をなしていないことは認められるが単に扶養をなさないというだけではいわゆる親権を濫用したとは解せられない。抗告人がその親権者の地位を利用して子の受くべき扶助料を勝手に下附を受け費消したとかその他親権者としての地位を利用して子に対して不利益を生ぜしめた等の事実がない限り親権濫用とは認めがたい。しかるに原審に於ては単に抗告人が二郎を扶養しないという一事を逮へて親権を濫用したとの理由でその喪失の宣告をなしたことは失当といわざるを得ない。本件抗告は理由がある。しかして相手方提出の疏明によつては抗告人がその親権を濫用した事実は認め難いから原審判を取消し本件審判の申立を棄却することとし、主文の通り決定する。

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