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秋田地方裁判所 平成元年(ワ)257号 判決

原告

小林広秀

柴田悟

船木千里

斉藤剛

田口英康

阿部靖彦

竹嶋公生

原田好太郎

高橋晴彦

園辺誠幸

池田隆

佐々木茂美

小林一幸

皆川浩之

右一四名訴訟代理人弁護士

深井昭二

金野繁

金野和子

横道二三男

山内満

沼田敏明

虻川高範

小林昶

荘司昊

高橋敏朗

伊藤治兵衛

川田繁幸

被告

東日本旅客鉄道株式会社

右代表者代表取締役

住田正二

右訴訟代理人支配人

山岡瑞雄

右訴訟代理人弁護士

内藤徹

主文

一  原告らの請求をいずれも棄却する。

二  訴訟費用は原告らの負担とする。

事実及び理由

第一請求

原告らが、被告との間で、それぞれ、別紙(一)発令一覧表の現職場欄記載の各職場に勤務する義務がなく、同表の原職場欄記載の各職場に勤務する権利を有することを確認する。

第二事案の概要

一争いのない事実

1  原告らは、いずれも昭和六二年三月一〇日当時、日本国有鉄道(以下「国鉄」という。)に雇用され、それぞれ別紙(一)発令一覧表の前職場欄記載の各職場に勤務していた者であり、また、いずれも国鉄労働組合(以下「国労」という。)に所属する者である。

2  昭和六一年一一月二八日、日本国有鉄道改革法(以下「改革法」という。)等の国鉄改革関連法が成立し、国鉄が経営している旅客鉄道事業及び貨物鉄道事業が被告等の各旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社(以下一括して「新会社」という。)に引き継がれる旨定められた。

被告の設立委員は、翌昭和六二年二月一二日、原告らを同年四月一日付けで被告に採用することを決め、同年二月一六日ころ、これを原告らに通知したところ、国鉄は、同年三月一〇日付けで、原告らに対し、それぞれ、別紙(一)発令一覧表の配転先職場欄記載の各職場、同職名欄記載の各職名に勤務すべき旨命じ(以下「本件配転命令」という。)、更に、被告の設立委員は、同月一六日、原告らを同年四月一日付けで右と同じ職場、職名に配属することを決め、そのころこれを原告らに通知した(以下「本件配属通知」という。)。

3  原告らは、いずれも、同年三月三一日、国鉄を退職し、同年四月一日、被告に採用されて、右通知に係る職場、職名において勤務し、現在、別紙(一)発令一覧表の現職場欄記載の各職場に勤務している。

4  同表の前職場欄記載の各職場は、現在、同表の原職場欄記載の各職場に対応している。

二原告らの主張

1  本件配転命令及び本件配属通知(以下一括して「本件配転命令等」という。)の無効

(一) 不当労働行為

原告らの所属する国労は、国鉄の推進するその分割・民営化に反対していたところ、国労の壊滅を目指す国鉄当局による組合員に対する差別的取扱いや脱退強要等の支配介入等を受けたため、大幅な組織の減少を余儀なくされたものの、なお相当数の勢力を維持していた。

そのため、国鉄及び設立委員は、北海道及び九州における新会社については国労組合員の多くを採用から排除したが、被告をはじめとする本州の新会社においては国労組合員も含めほぼ希望者全員が採用される見込みとなったため、更に国労の弱体化を狙って、本件配転命令等により、国労組合員のみを、遠隔地に配属したり本来の職務から排除したりしたものであり、このことは、(1)本件配転命令等と時を同じくしてなされた配転命令及び配属通知において、通勤不可能な遠隔地に配属させられたのは、管理職を除けば国労組合員に偏っていたこと、(2)原告らと同様遠隔地に配属された国労組合員で国労を脱退した者はもとの職場ないしその周辺に戻されているが、国労にとどまっている者は戻されていないこと、(3)原告ら国労組合員が全員被告に採用される見込みになった昭和六二年二月初めころ、右当時の国鉄幹部が新会社での扱いは違うはずである旨述べ、暗に配属についての国労差別を認めていたほか、被告設立後も出向、配転につき国労差別を繰り返しており、国鉄及び新会社の不当労働行為意思は一貫していることに照らし、明らかである。

従って、本件配転命令等は、労働組合法七条一号、三号に該当し、無効である。

(二) 人事権の濫用

勤務場所の変更、殊に転居を伴う遠隔地への配転は、労働者及びその家族に与える不利益が大きいから、使用者は、配転を命ずるに際しては、その業務上の必要性を十分吟味するとともに、合理的な基準によって対象者を選定しなければならず、右判断が恣意的で労働者に著しい不利益を課す場合には、その配転は人事権の濫用として無効というべきである。

本件配転命令等は、原告らが他の職員よりも精神的、経済的不利益がはるかに大きいにもかかわらず、被告において、業務上の必要性を十分吟味し他の合理的方策を検討するなどの努力をしないのみならず、右不利益につき何ら顧慮することなく強行したものであって、原告らは、異議を唱えながらも解雇を回避するためやむなく発令先に赴き勤務しているものの、単身赴任をしている者、妻らを伴って転勤した結果とも働きだった妻が職を失った者、病弱・高齢の親を残し不安を抱えている者、月一、二回は実家に帰省し実家の農業等の家業を手伝ったり家族の生活の面倒をみたりしている者など、二重生活による多大の不利益を強いられている。

従って、原告らに対する本件配転命令等は、人事権の濫用に該当し、無効である。

2  被告の責任

(一) 国鉄と被告は異なる法人格であるが、その一事をもって国鉄の行った人事異動につき被告が責任を負わないとはいえない。

営業譲渡や旧法人の解散・廃止と新法人の設立などの場合に、雇用関係の承継の有無等が争われた事案は少なくないところ、これらの場合には、株式の所有者、役員及び従業員の構成、事業内容、設備・資産・商品等を比較検討し、その間に実質的同一性がある場合には、新法人等が使用者にあたるとして、不当労働行為責任が認められている。国鉄から被告等への移行に際しても、事業内容、資産、人的構成等ほとんどについて同一であり、ただその根拠となる法を異にするに過ぎないから、両者は実質的には一体ないし同一というべきであり、その移行過程において違法無効な行為が行われた場合には、その責任は現存する被告が負うべきである。

(二) 次に改革法等の解釈としても、被告は責任を免れないといわなければならない。即ち国鉄の行った本件配転命令は、国鉄自身のため必要とされたものではなく、もっぱら被告への事業の円滑な移行のためになされたものであることは被告も自認するところである。そして、設立委員は、旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社に関する法律(以下「会社法」という。)附則二条により、新会社がその成立の時において事業を円滑に開始するために必要な業務を行うことができる旨定められており、新会社の発足に当たり業務運営上必要な人員を確保することも右業務として設立委員がなすべきところ、それらの人にどのような仕事(所属、勤務箇所、職名等)をさせるかを決定することも、これと密接不可分の事柄として設立委員が決すべきことである(改革法二三条一項は設立委員が承継法人の職員の労働条件を提示すべき旨定めているところ、同法施行規則九条一項一号は、右労働条件の内容につき就労の場所及び従事すべき業務に関する事柄と定めているから、原告らの所属、勤務箇所、職名等は、右労働条件の具体的内容に含まれるというべきである。)。従って、本件配転命令は、本来設立委員が自らの判断と責任でなすべき業務を国鉄に包括的に代行させたものとみるべきであり、このことは、改革法等の国会審議に際し、運輸大臣等が国鉄の立場につき設立委員などの採用事務を補助するものであり、民法の準委任に近く代行と考えるべきであるなどと答弁していることからも裏付けられる。そうすると、国鉄の本件配転命令は、承継法人の採用について当該承継法人の設立委員がした行為に該当するから、改革法二三条五項により当該承継法人がした行為とされ、国鉄が右命令につき不当労働行為をなしたときには、被告が労働組合法上の使用者として責任を負うことは明らかである。

また、設立委員の本件配属通知も、その際右通知に異議を述べれば被告に採用されないおそれがあったから、原告らとしては退職を覚悟しない限り不当労働行為を受忍せざるを得なかったものというべきであり、右通知に応じ新たな労働契約を締結したということはできない。

(三) 本件配転命令等は、国鉄のみでも設立委員のみでもできないものであり、一連の行為は密接不可分というべきである。従って、その主たる人選行為である本件配転命令に不当労働行為がある場合は、右一連の行為が全体として不当労働行為となり、設立委員ひいては被告が責任を負うものといわなければならない。

即ち、本件配転命令と同時期に異動がなかった職員は、設立委員から、従前の勤務先に配属する旨の通知を受けているところ、本件配転命令が不当労働行為等により無効であれば、原告らの勤務先は当然従前の勤務先であって、本件配転命令に際しては、異動がなかった職員と同様、従前の勤務先に配属する旨の通知がなされたものと解するほかはない。もっとも、本件配転命令の行為者は国鉄であり、本件配属通知の行為者は設立委員であるが、右両者の前記のような関係からすれば、前者の無効が後者に影響を及ぼすことは明らかであり、後者の勤務先も無効になる結果、設立委員は従前の勤務先に配属したものといわなければならない。

仮に前者の無効が直ちに後者に影響しないとしても、前者が無効である限り、原告らは従前の勤務先で勤務する権利を有していたことになるところ、この権利を後者が変動させたものであり、前記の関係からして、国鉄が不当労働行為をした以上、設立委員もその責任を免れず、まして後者は設立委員の名でしたものであるから、それに基づく責任を負うことは明らかであって(実際にも、設立委員の庶務は運輸省及び国鉄において行われていたところ、委員には元運輸事務次官や国鉄総裁が加わっていたのであるから、これらのスタッフを用いて実質的な判断をなし得たというべきである。)、これについても無効になるというべきである。

(四) 以上のように解さなければ、本件配転命令における不当労働行為の責任は全く不問に付されることになるが、これは、憲法に由来する労働組合法の存在意義を没却するものであって、到底許容できないところである。

三被告の主張

1  本案前の主張

(一) 原告らと被告との労働契約は、就業場所、職種を限定しない契約であり、このような契約においては、使用者は、職務上の必要に応じて、労働者の給付すべき労務の種類、勤務する場所、態様等を決定し、かつ、これを実施するため労働者を指揮する権限を有し、しかも、これは、労働契約の履行過程における事実行為で、就業場所は労働契約上の権利義務の内容になっていないから、原告らの本訴請求は、権利義務の確認を求めるものとはいえず、不適法である。

(二) 国鉄と被告は全く法人格を異にしており、また被告は国鉄と職員との労働契約関係を承継したこともないところ、本訴請求は、国鉄の行った本件配転命令の無効を前提とするものであるが、被告は右命令について責任を負うものではないから、当事者適格を欠くものとして却下を免れない。

2  本案の主張

(一) 国鉄は、大幅な余剰人員を抱え、民営化に際し生産性を私鉄並みに引き上げる必要があったことから、改革法は、明文をもって、被告を、国鉄と別個の法人とした上、国鉄から引き継ぐべき事業等の権利義務の内容を限定しているところ、国鉄の職員との労働契約関係を承継しないことは明らかであり、法文を離れた営業譲渡等の一般法理をあてはめることは失当である。

そして、承継法人の設立委員は、会社法附則二条一項によって設けられた機関であって、発起人としての職務のほか、承継法人の職員の採用に関する改革法二三条所定の業務等を行うこととされていた。しかし、採用すべき社員を国鉄職員に限定せざるを得ないこと、一度に二〇万人を超える大量の社員を採用しなければならないことなどから、個々の国鉄職員のデータ等を把握している国鉄にも、承継法人の職員となることに関する国鉄職員の意思を確認し、その意思を表示した者の中から設立委員の提示する採用の基準に従い、職員となるべき者を選定する権限を与えたものである。即ち、同条は採用手続に関する権限を設立委員と国鉄の両者に分配したものであり、両者はそれぞれ独立してその権限を行使したに過ぎず、両者に準委任ないし代行といった関係はなかったものである(原告らは法案審議の過程における運輸大臣の発言を云々するが、かかる表現は説明の便宜上とられたものに過ぎず、これによって成立した法の解釈が左右されるものではない。)。

国鉄は、毎年年度末に大量の退職者が出ることから、毎年二、三月に定期的な異動を行ってきたが、昭和六一年度は、通常の退職者のほか、国鉄改革に伴う大量の退職予定者が出たため、昭和六二年二月の時点で承継法人に採用されるべき職員が確定したのに伴い、同年三月一〇日までに、国鉄改革が実施される直前の同月三一日まで国鉄の事業が滞りなく行われること及び国鉄改革が実施される同日から翌四月一日にかけて列車運行に支障がなく円滑に国鉄の事業を移行させることを目的として、大規模な人事異動を順次実施した。右異動に当たっては、通常の異動と同様、当該職員の能力、意欲、適性等の勤務成績や通勤事情等を、国鉄において個別に判断したのであって、設立委員からの指示等は一切なかったし、そもそも設立委員の権限は法定されており、この当時の国鉄の人事異動について容喙すべき権限はなかった。

原告らは、本件配転命令により、国鉄が、本来設立委員の行うべき労働条件の決定を代行した旨主張するが、改革法二三条一項の労働条件は、運輸省令で定める(同条四項)とされていることから明らかなとおり、労働契約の基本的内容を指し、本件配転命令に基づく配属先のような個別具体的な事項に及ぶものではないことは自明であって、実際にも設立委員が承継法人発足前にかかる配属決定を行うことは要求されていない。

従って、本件配転命令は、国鉄固有の責務として行われたものであるから、仮にそこに不当労働行為等があったとしても、国鉄の債務を承継した日本国有鉄道清算事業団(以下「清算事業団」という。)に対し損害賠償請求等をするのであれば格別、設立委員ひいては被告がその責任を負うことはあり得ない。

(二) 設立委員のした本件配属通知は、原告らに対し勤務を命じたものではなく、被告における組織名称、資格、職名、賃金等が国鉄におけるそれと同一でないところがあることから、採用予定者に対し、国鉄における右当時の勤務箇所、職名、賃金等を被告におけるそれに機械的に読み替えて、被告における雇用条件を確認的に通知し、最終的に諾否を決定する参考としたに過ぎず、昭和六二年四月一日に確定的に受諾した者について、被告との間にその内容に応じた労働契約が成立することになるのである。

従って、本件配属通知は、原告らの労働条件に関し実質上の変更をきたすものでないから、使用者として不当労働行為等をなしたという余地はない。

(三) 右のとおり国鉄のした本件配転命令は本来被告とは無関係であるが、念のため右命令が不当労働行為ないし人事権の濫用にあたらない点を付言する。

(1) 原告らは国鉄秋田鉄道管理局(秋田県並びに青森県及び山形県の各一部)において採用されたものであるところ、採用に際し、右管内のいずれにおいても勤務可能であることを了解して採用されたものであり、国鉄の就業規則においても、業務上の必要がある場合に職員に人事異動を命ずることができ、職員は正当な理由がない限りこれを拒むことができない旨定められていた。

被告への採用に際しても、就業場所は被告の営業範囲内とされており、原告らは、被告の営業範囲内であれば転勤もありうることを予期して採用を申し込んだものである。

(2) 国鉄は長距離の鉄道上に多くの駅区を有している上、従来から秋田鉄道管理局管内の山形県地区には地元出身者が少なく、秋田県や青森県から転勤することが少なくなかった。

本件配転命令に際しては、国鉄改革という未曾有の事態に関連し、国鉄が膨大な余剰人員を抱えていたことから、大量の退職者、転出者が出、各職場の人員に変動が生じ、一方需給の不均衡も想定されたことから、鉄道業務の安定的かつ円滑な遂行という業務上の必要性のためになされたものであり、若年退職、関連企業への出向、広域異動といった本件配転命令とは比較にならない大きな異動の中で行われたものである。

このような大幅な異動について、その一面のみを取り上げて国労組合員に偏っているなどということは失当である。

(3) また、転勤命令が不当労働行為にあたるかが争われる場合は、対象者が組合役員ないし活動家で、転勤により組合活動上著しい制約を被る旨主張されることが多いところ、原告らは組合内では役職がないか末端組織の平役員に過ぎず、平素の組合活動からしても、他に配転を意図せしめる程の存在ではないから、本件配転命令の決定的原因は原告らの組合活動とは直接関係のない業務上の必要にあることは明らかである。

(4) 国労は国鉄と事前通知及び簡易苦情処理に関する協約を締結し、所属長は転勤を命ずるに際し文書で事前に通知すること、右通知につき苦情を有する者はその解決を簡易苦情処理会議(国鉄及び国労各二名の委員から成る。)に請求できること、申告者及び所属長は会議の判定及び決定に従わなければならないことを約しているところ、原告らは、本件配転命令の事前通知について簡易苦情処理を申し立て、いずれも却下されている。にもかかわらず本訴を提起するのは労使間の信義に反するし、労使の合意により却下されたことは、右配転命令が不当でないことが認められたことを示すものというべきである。

(5) 転勤命令は、業務上の必要性が存しない場合、又は業務上の必要性が存する場合であっても、他の不当な動機・目的をもってなされたものであるときもしくは労働者に対し通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情がない限り人事権の濫用になるものではなく、右業務上の必要性についても、高度の必要性に限定されず、企業の合理的運用に寄与する点が認められれば足りるところ、原告らの主張する不利益はいずれも転勤に伴う通常のものに過ぎない。被告は、社宅や寮の確保はもとより、通勤手当や単身者に対する別居手当の支給等の細かい配慮をしているのであり、原告らのいうような事情をいちいち取り上げていたのでは、国鉄や被告のような広い地域に多種多様な職場を有する大企業において、人事運用は不可能になる。

原告らは、自宅から通勤可能な範囲で就労する権利を有するかの如くであるが、もとより国鉄採用に際しそのような合意はなかった。国労は、現地現職の原則に拘泥し、本人の意思に反する異動に反対してきたが、かような主張は社会の実情から甚だしく乖離するものであり、国労が地域間異動(秋田県から首都圏等に異動するもの)に応じるようになったのも、こうした非現実的な姿勢を維持できなくなったことを示すものというべきである。

(6) 原告らは、昭和六二年三月、秋田地方裁判所に対し、本件と同趣旨の地位保全仮処分を申請し、平成元年三月、判決言渡の直前になって取り下げ、それから四か月後、何ら事情の変更がないのに本訴を提起したものであり、図らずも原告らが人事権の濫用という主張を維持することが至難であることを自認したものといわなければならない。

四争点

1  本訴請求は適法か。

(一) 原告らと被告との労働契約において、就業場所は権利義務の内容になっているか。

(二) 被告に当事者適格があるか。

2  本案について

(一) 本件配転命令等の効力が現在の職場に勤務する義務の不存在又は従前の職場に勤務する権利の存在に影響を及ぼすか。

(二) 本件配転命令等が、不当労働行為又は人事権の濫用として違法無効になるか。

第三争点に対する判断

一〈書証番号略〉、証人今井伸及び同伊藤嘉道の各証言、原告船木千里及び同竹嶋公生各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、以下の各事実を認めることができる。

1  原告らの国鉄における採用等

(一) 国鉄においては、一般の職員の採用は、各鉄道管理局長に委ねられており、当該局長の管轄する鉄道管理局の範囲内において運用されることとされていた。

(二) 原告らは、いずれも昭和四五年から五七年にかけて、国鉄秋田鉄道管理局において採用された。

同局の管轄は、青森県の一部(奥羽本線の津軽新城以南)、秋田県及び山形県の一部(奥羽本線は米沢以北、羽越本線は本楯以北)であり、原告らの採用に際しては、右管内のいずれの箇所にも勤務可能であることが応募資格とされていた。

そして、同局管内の山形県地域では、従前から地元出身者が少ないため、秋田県出身で一旦は山形県内で勤務する者が多く、原告らの中にも同県内で勤務したことのある者が含まれている。

(三) 国鉄の就業規則において、人事異動につき、次のように定められていた。

一八条 職員の人事上の異動(転勤、転職、昇職、降職、昇格、降格、昇給、降給、休職、復職、派遣、休業、復業、退職及び免職)については、所属長又はその委任を受けた者が行う。ただし、総裁が採用を決定した大学卒業者の免職を除く。

一九条①業務上必要ある場合は、職員に人事上の異動を命ずる。

②職員は、正当な理由なくして、前項の人事上の異動を拒むことはできない。

(四) 国鉄と国労は、昭和四六年三月二日、雇用の安定等に関する協定を締結し、機械化、近代化、合理化等の実施に際し、(1)雇用の安定を確保するとともに、労働条件の維持改善を図ること、(2)本人の意に反する免職及び降職は行わないこと、(3)必要な転換教育等を行うこと、(4)配置転換となる者及び職員の申し出による休職の取扱いを希望する者の取扱いについては、別に定めるところによるものとすることを約し、更に、右(4)に基づいて、同年五月二〇日、別紙(二)のとおり、配置転換に関する協定を締結した上、右協定に付属して、配置転換後において、本人が配置転換前の職場への復帰を希望する場合は、要員需給等を勘案し、できる限り復帰できるようにすることが了解されており、実際上本人の意思に反する異動は困難になっていた。

2  国鉄改革の経緯

(一) 国鉄は、昭和三九年ころから多額の赤字を計上するようになり、様々な再建策が論じられたが、その中で、全国一律の公社という経営体制の見直しとともに、民営鉄道に比し人員が多く経費に占める人件費の割合が高いといういわゆる余剰人員の問題が指摘されていた。

(二) 昭和五八年六月一〇日、日本国有鉄道の経営する事業の再建の推進に関する臨時措置法に基づき、日本国有鉄道再建監理委員会が発足し、同委員会は、昭和六〇年七月二六日、国鉄を分割・民営化し、人員は民営鉄道並みの適正規模(約一八万三〇〇〇人)に二割上乗せした程度を妥当とすること等を骨子とした国鉄改革に関する意見を内閣総理大臣に提出した。

(三) 同月三〇日、右意見を最大限に尊重する旨の閣議決定が行われ、この趣旨に沿って、(1)国が、①被告を含む六つの旅客鉄道株式会社及び日本貨物鉄道株式会社を設立して、国鉄が経営している旅客鉄道事業等を地域に応じて前者に、貨物鉄道事業を後者にそれぞれ引き継がせること、②新幹線鉄道保有機構を設立して、新幹線鉄道の施設の一括保有等に関する業務を行わせること、③これらのほか、国鉄が行っている事業又は業務の一部につき新会社等に引き継がせること、④右引き継いだときは、国鉄を清算事業団に移行させ、継承されない資産、債務等を処理するための業務等を行わせるほか、臨時に、その職員の再就職の促進を図るための業務を行わせるものとすることなどを骨子とする改革法、(2)新会社に関する会社法、(3)新幹線鉄道保有機構法、(4)日本国有鉄道清算事業団法、(5)日本国有鉄道退職希望職員及び日本国有鉄道清算事業団職員の再就職の促進に関する特別措置法、(6)鉄道事業法、(7)日本国有鉄道改革法等施行法、(8)地方税法及び国有資産等所在市町村交付金及び納付金に関する法律の一部を改正する法律(国鉄の経営形態の改革に伴う所要の改正を行うもの)、(9)日本国有鉄道の経営する事業の運営の改善のために昭和六一年度において緊急に講ずべき特別措置に関する法律のいわゆる国鉄改革関連九法案を国会に提出したところ、右(9)については昭和六一年五月に成立したものの、その余は一旦廃案になった。

(四) 右廃案になった八法案は、同年九月から再度国会で審議されたが、右審議に際し、新会社の職員の採用について、運輸大臣は、設立委員の「採用の方針に従って、補助者の立場として国鉄はその意を受けて個々の職員の方々の希望を聞きながらその配置を決めていく。いわば新会社のお手伝いをするということでありましょう。」、政府委員(運輸大臣官房国有鉄道再建総括審議官)は、名簿作成等について国鉄が行うということは「法律的に見ますと、事実行為の委託といいますか、準委任、民法で言いますと準委任という関係になろうかと思います。」、設立委員と国鉄が「同人格かどうかという、そういう観点から私ども考えたことはございません。」などと述べた。

右各法案は、いずれも、同年一一月二八日、可決成立し、同年一二月四日、公布された。

3  国鉄改革をめぐる労使関係

(一) 国鉄には、もと国労のほか、鉄道労働組合(以下「鉄労」という。)、国鉄動力車労働組合(以下「動労」という。)及び全国鉄施設労働組合(以下「全施労」という。)などの労働組合が存した。

(二) 国鉄の経営の悪化に伴い、労使慣行に対する批判も強まり、昭和五七年三月四日、運輸大臣は、国鉄当局に対し、いわゆるヤミ手当、突発休、ヤミ休暇、現場協議制の乱れなどの全般について、実態調査等の総点検を行い、調査結果に基づき厳正な措置をとるよう指示した。

これを受けて、国鉄では、同月から昭和六〇年九月まで、半年に一回ずつ八回にわたり総点検を行った結果、他の点は概ね是正されたが、勤務時間内の入浴及びリボン・ワッペンの着用については、鉄労、動労及び全施労は概ね是正に応じたものの、国労は、既得権、慣行、労働者の団結権といった主張をしてこれに抵抗した。

(三) 国鉄は、昭和五九年度期首において、約二万五〇〇〇人の余剰人員を抱えており、同年六月五日、各組合に対し、(1)現行協約による退職勧奨制度の枠組みを維持しつつ、在職条件・退職条件を見直し、勧奨退職の促進を図ること、(2)現在、退職の意思表示を前提とした本人の申し出による休職制度があるが、この制度を改訂し、退職前提の休職制度と復職前提の休職制度とに拡充すること、(3)現在、指定職員については、関連企業の育成・強化、人材の育成・民間マインドの導入、業務に必要な事項の調査・研究、海外技術協力その他の見地から、一定期間他企業等へ派遣することのできる制度が設けられているが、指定職以外の職員についても同様な制度を設けることなどの余剰人員対策を提示し、更に具体的な検討を加えた上、同年七月一〇日、右三点を骨子とする余剰人員の調整策を提案した。

動労、鉄労及び全施労は、退職制度の見直しを除き、同年一〇月九日、妥結し、国労は公共企業体等労働委員会のあっせん等を経て、翌昭和六〇年四月九日、退職、休職、派遣に関する協約を締結した。

しかし、国労は、国鉄の右方針に反対し、退職、休職、派遣に協力しない「三ない運動」(「やめない」、「休まない」、「出向かない」というもの)を行ったため、国鉄は、同年五月二五日、国労に対し、文書で右運動の中止を求めるとともに、このような状態が続けば右1の雇用の安定等に関する協約の存続にも深刻な影響を及ぼすことにもなりかねない旨申し入れ、結局右協約の更新に応じず、同年一一月三〇日の経過により右協約は失効し、これとともに前記配置転換に関する協定も失効した。

(四) この間、同年七月には前記再建監理委員会の意見が出されて、国鉄の分割・民営化の動きが具体化した。

これに対し、国労は、従来から分割・民営化に反対の立場をとり、それを示すワッペンを着用するなどの闘争を行ったが、鉄労は同年八月の大会で分割・民営化の支持を決定し、更に従来これに反対していた動労も労使協調路線に方針を変更し、翌昭和六一年一月一三日、国鉄と鉄労、動労及び全施労は、国鉄改革及び雇用の安定に労使が一致協力して取り組む旨の労使共同宣言を締結した。

(五) 同年三月、国鉄は、余剰人員対策を円滑に進めていくために、雇用の場が地域的に偏在している状況をふまえ、地域的不均衡を調整していく必要があるとして、広域異動を行うことを各組合に提案した。

これに対し、国労は、広域異動は、配転であり労働条件の変更であるとして、団体交渉を求めたが、交渉は行われなかった。他方、鉄労、動労及び全施労は、基本的に了承して、同月一四日、協定を締結し、これに基づき、同月以降、北海道や九州から東京等に計約三八〇〇名が異動したが、右広域異動の実施については、異動先における将来の配属に際しての希望は可能な限り、優先的に配慮する旨了解されており、実際の運用においても、一定期間後は、概ね本人の希望地に戻す扱いがされていた。

(六) 同年七月ころから、国鉄は各地に人材活用センターを設置し、国労の活動家らが多く配属されて、鉄道事業とは無関係の職務に従事させられるなどしたため、右センターに配属されると、民営化後の新事業体にいけないのではないかという不安が職員らに広まった。

(七) 国鉄は、同年八月二七日、鉄労、動労、全施労及び真国鉄労働組合(雇用安定協約の締結を主張するグループが国労を脱退して結成したもの)によって組織された国鉄改革労働組合協議会と、今後の鉄道事業のあり方についての合意事項(第二次労使共同宣言)を締結したが、右合意事項において、労使は、分割・民営化を基本とする国鉄改革に向かって一致協力すること、組合は、今後争議権が付与された場合も鉄道事業の健全な経営が定着するまで争議権の行使を自粛すること、今後の鉄道事業が健全な発展を遂げるためには、業務遂行に必要な知識と技能に優れ、企業人としての自覚を有し、向上心と意欲にあふれる職員により担われるべきであり、これまでにも派遣・休職制度等、直営売店、広域異動等を推進し、労使共同宣言に則り着実な努力を重ねてきたが、今後は更に必要な教育の一層の推進を図るとともにそれぞれの立場において職員の指導を徹底すること等が謳われていた。

(八) 同年一〇月九日及び一〇日、国労の第五〇回臨時全国大会において、労使共同宣言を締結し雇用確保を図ろうとする緊急執行部方針案が提出されたが、否決され、国鉄の分割・民営化に反対する新執行部が選出された。

この前後から国労の組合員の脱退が相次いでいたが、翌昭和六二年二月、旧執行部を中心として新たな組合が結成された。

4  被告における採用の経緯等

(一) 前示改革法等国鉄改革関連法の成立を受け、昭和六一年一二月四日、運輸大臣は、会社法附則二条一項に基づき、新会社の設立委員(各会社に共通の委員及び各会社ごとの委員)を任命し、更に、同月一六日、国鉄の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関する基本計画が閣議決定され、国鉄の職員のうち、承継法人の職員となる者の総数は二一万五〇〇〇人、うち被告については八万九五四〇人と定められた。

(二) 同月一一日、第一回の設立委員会が開催されて、新会社の職員の採用の基準と労働条件の基本的な考えが決められ、同月一九日、第二回の設立委員会において更に詳細な労働条件が定められ、国鉄に対し、右採用の基準及び労働条件が提示された。

(三) 国鉄は、これを受けて、同月二四日から翌昭和六二年一月七日までに、職員に対し、被告ほか承継法人に採用を希望するか否かの意思確認を行ったが、この際、各承継法人の概要(事業内容、設立時の事業地域、職員数、経営諸元、設立委員など)並びに採用の基準及び労働条件(被告については別紙(三)のとおり)が示され、原告らはいずれも被告への採用を希望した。

この間、同月六日、国労秋田地方本部執行委員長は、国鉄秋田鉄道管理局長に対し、新会社の採用に当たっては本人の第一希望を尊重し、その実現を図ること、配属に当たっては現地・現職を基本とすること、要員の地域間の不均衡については、地方局間の業務移管などにより解消を図ること、広域助勤や配転のローテーション化を図ることなどを申し入れた。

国鉄は、職員の意思と採用基準等を勘案の上、承継法人の職員となるべき者の名簿を作成し、同年二月七日、これを設立委員に提出した。なお、承継法人への採用を希望する職員が予想外に少なかったことなどから、被告はじめ本州における国鉄の旅客鉄道事業を引き継ぐ会社には、希望者は概ね採用されることになり、秋田鉄道管理局管内においても、採用基準に適合しないと判断された一名を除き、原告らを含め希望者は全員が右名簿に記載された。

(四) 同月一二日、第三回の設立委員会が開催され、右名簿に記載された者は全員採用されることになり、同日付けの、原告らを含めこれらの者に対する「あなたを昭和六二年四月一日付けで採用することに決定いたしましたので通知します。なお、辞退の申し出がない限り、採用されることについて承諾があったものとみなします。」と記載された採用通知(被告については被告設立委員会委員長斎藤英四郎名)が、同月一六日以降送付された。

(五) 国鉄は、従前から年度末の職員の退職やダイヤグラムの改正に併せて、二、三月ころ大幅な人事異動を行っていたが、昭和六二年は、国鉄改革に伴う希望退職者や公的部門への転出者が大量に生じたほか、右(四)の通知により承継法人への採用者も決まったこと、更に、右採用者が本来の鉄道業務の適正人員を上回る数であったことから、余剰人員の配置が必要となることなどの事情も加わったため、これらをふまえて、二月から三月一〇日までに大量の人事異動を行い、原告らに対しても、本件配転命令がなされた。

原告らは、同月五日、右命令の事前通知について、国労と国鉄との労働協約に基づき、簡易苦情処理会議に申告したが、同月九日、いずれも要員需給等を勘案した上での人事運用であるとしてこれを却下する裁定がなされた。

なお、右同月一〇日までの異動によって、人材活用センターは廃止された。

(六) 新会社の設立委員は、同月一六日付けの、前記採用通知をした者に対する「昭和六二年四月一日付けで、あなたの所属、勤務箇所、職名等については、下記のとおりとなります。」として、当該職員の所属、勤務箇所・職名、等級、賃金その他の記事を記載した通知(被告については前記委員長名)を作成し、原告らを含むこれらの者に同日以降送付したが、右通知の勤務箇所及び職名は、右時点の国鉄におけるもの(従って原告らについては本件配転命令後のもの)を被告におけるそれに機械的に読み替えたものだった。

同月一七日、第四回の設立委員会が開かれ、新会社の役員や定款について決められた。同月二三日、被告の創立総会が開催され、右定款を承認して、取締役及び監査役を選任するなどし、引き続き取締役会が開かれて、代表取締役が互選された。

(七) 新会社への採用を辞退する者も相当数に及んだが、原告ら採用希望者は、国鉄に対し退職届を提出し、同月三一日、国鉄を退職した。

(八) 同年四月一日、会社法附則九条により改革法附則二項の施行とともに、被告はじめ新会社が成立し、秋田鉄道管理局の管内を引き継いで、被告に秋田支店(平成二年秋田支社に改編)が設置された。

原告らは、いずれも被告に採用され、本件配属通知に示された職場に勤務した。

二争点1(本案前の主張)について

1  確認訴訟の適否

(一) 被告は、本訴請求が労働契約上権利義務の内容となっていない事項についての確認を求めるもので、不適法である旨主張する。

(二) しかしながら、勤務地の変更は、一般的にいって、労働者の法的権利義務関係を変動させるものということができ、原告らと被告との間の労働契約において、勤務地がまったく権利義務の内容とならず、原告らについて何らの法律行為によらずして勤務地の変更がなされるような契約が締結されているとは到底いえないから、右主張は理由がない。

2  被告適格

(一) 被告は、被告が国鉄とは別の法人であるから、被告適格はない旨主張する。

(二) しかしながら、原告らの現在の労働契約に基づく現在の職場に勤務する義務の不存在確認あるいは別の職場に勤務する権利の存在確認請求においては、その被告適格が、原告らの現在の労働契約の相手方である被告に存することは明らかである。

右主張も理由がない。

三争点2(本案の主張)について

1  本件配転命令

(一) 本件配転命令が国鉄の名でなされたこと、国鉄と被告が別個の法人格であることは、原告らも争わないところである。

(二) ところで、改革法は、(1)国は、被告を含む六つの旅客鉄道株式会社を設立し、地域に応じて国鉄の旅客鉄道事業(六条)、連絡船事業(九条)、旅客自動車運送事業(一〇条)を引き継がせるものとすること、(2)国は、新幹線鉄道保有機構を設立し、新幹線鉄道の施設の一括保有及び貸付けに関する業務を行わせるものとすること(七条)、(3)国は、日本貨物鉄道株式会社を設立し、国鉄の貨物鉄道事業を引き継がせるものとすること(八条)、(4)国は、右以外の法人で運輸大臣が指定するものに、国鉄の電気通信、情報の処理及び試験研究に関する業務のうち、一体的に運営することが適当であると認められるものを引き継がせるものとすること(一一条一項。これらを一括して「承継法人」と称される。)、(5)国は、これらのほか、国鉄が行っている事業又は業務(事業等)のうち、承継法人が行うこととなる事業等を併せて運営することが適当と認められるものについては、当該承継法人に引き継がせるものとすること(一一条二項)、(6)国は、承継法人が国鉄から事業等を引き継ぐに際し、その引き継いだ事業等の健全かつ円滑な運営を阻害しない範囲において、当該承継法人(北海道、四国及び九州における旅客鉄道株式会社並びに右(4)の法人を除く。)に対し、国鉄の長期借入金及び鉄道債券に係る債務その他の債務を承継させる等の措置を講ずるものとすること(一三条)、(7)国は、国鉄の改革の実施に伴い、日本鉄道建設公団の鉄道施設に係る資産又は同公団及び本州四国連絡橋公団の鉄道施設の建設に係る費用の一部について国鉄又は清算事業団への承継その他の費用負担に関する適切な措置を講ずるものとすること(一四条)、(8)国は、国鉄が承継法人に事業等を引き継いだときは、国鉄を清算事業団に移行させ、承継法人に承継されない資産、債務等を処理するための業務等を行わせるほか、臨時に、その職員の再就職の促進を図るための業務を行わせるものとすること(一五条)とした上、(9)運輸大臣は、国鉄の事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継等に関し、①承継法人に引き継がせる事業等の種類及び範囲に関する基本的な事項、②承継法人に承継させる資産、債務並びにその他の権利及び義務に関する基本的な事項、③国鉄の職員のうち承継法人の職員となるものの総数及び承継法人ごとの数、④その他承継法人への事業等の適正かつ円滑な引継ぎに関する基本的な事項について、基本計画を定め、国鉄に対し、承継法人ごとに、その事業等の引継ぎ並びに権利及び義務の承継に関する実施計画を作成すべきことを指示しなければならないこと(一九条一ないし三項)、(10)国鉄は、右指示があったときは、右基本計画に従い、①当該承継法人に引き継がせる事業等の種類及び範囲、②当該承継法人に承継させる資産、③当該承継法人に承継させる債務、④右②及び③のほか、当該承継法人に承継させる権利及び義務、⑤右①ないし④のほか、当該承継法人への事業等の引継ぎに関し必要な事項について実施計画を作成し、運輸大臣の認可を受けなければならず、右実施計画を変更しようとするときは、運輸大臣の認可を受け、又は、軽微な変更をしようとするときは、その旨を運輸大臣に届け出なければならないこと(一九条四ないし七項)、(11)右実施計画(右変更があったときは、変更後の実施計画。併せて「承継計画」と称する。)において定められた国鉄の事業等は、承継法人の成立の時(右(4)の法人にあっては附則二項の規定の施行の時。いずれも昭和六二年四月一日)において、それぞれ、承継法人に引き継がれるものとすること(二一条)、(12)承継法人は、それぞれ、右の時において、国鉄の権利及び義務(二四条一ないし三項により日本鉄道建設公団から承継するものを含む。)のうち承継計画において定められたものを、承継計画において定めるところに従い承継すること(二二条)をそれぞれ規定し、承継法人の職員の採用については、(13)①承継法人の設立委員(右(4)の法人にあっては当該法人。併せて「設立委員等」と称する。)は、国鉄を通じ、その職員に対し、それぞれの承継法人の職員の労働条件及び採用の基準を提示して、職員の募集を行うものとすること、②国鉄は、右提示がされたときは、承継法人の職員となることに関する国鉄の職員の意思を確認し、承継法人別に、その職員となる意思を表示した者の中から当該承継法人に係る右採用の基準に従い、その職員となるべき者を選定し、その名簿を作成して設立委員等に提出するものとすること、③右名簿に記載された国鉄の職員のうち、設立委員等から採用する旨の通知を受けた者であって附則二項の規定の施行の際現に国鉄の職員であるものは、承継法人の成立の時において、当該承継法人の職員として採用されること、④右①ないし③の実施に関し必要な事項は、運輸省令(同法施行規則)で定めること、⑤承継法人(右(4)の法人を除く。)の職員の採用について、当該承継法人の設立委員がした行為及び当該承継法人の設立委員に対してなされた行為は、それぞれ、当該承継法人がした行為及び当該承継法人に対してなされた行為とすること、⑥右③により国鉄の職員が承継法人の職員となる場合には、その者に対しては、国家公務員等退職手当法に基づく退職手当は、支給しないこと、⑦承継法人は、右⑥の承継法人の職員の退職に際し、退職手当を支給しようとするときは、その者の国鉄の職員としての引き続いた在職期間を当該承継法人の職員としての在職期間とみなして取り扱うべきものとすること(二三条)を定めているところ、右実施計画の内容について、基本計画における承継法人の職員の数は記載する旨規定されていないことや、前判示の被告への原告らの採用の経緯に鑑みても、改革法の趣旨が、国鉄の職員との労働関係を、承継法人にそのまま承継させるのではなく、一旦国鉄を退職した職員が新規に承継法人に採用されるという建前をとっていることは明らかである。

また、新会社の設立委員は、運輸大臣によって各会社ごとに命じられ、当該会社の設立に関し発起人の職務を行うこと(会社法附則二条一項)、改革法二三条に定めるもののほか、当該会社がその成立の時において事業を円滑に開始するために必要な業務を行うことができること(会社法附則二条二項)が定められており、もっぱら、これらの法の定める新会社の設立に関する職務を行うこととされている。

そして、本件配転命令は、国鉄がその判断と責任において行ったものであり、これについて被告の設立委員が何らかの関与をすることは、改革法等において予定されていないし、また、実際にもそのようなことがあったとは認められない。もとより、右命令による異動は、単に国鉄存続中の昭和六二年三月三一日までの国鉄の業務上の必要によるものではなく、同年四月一日被告を含む新会社が設立された以降の新会社における業務の円滑な運営をも意図したものではあるが、だからといって、右命令によって新会社における勤務場所が決まるわけではなく、新会社に採用されなければ同社において勤務し得ないことは明らかである。従って、原告らの被告における採用時の勤務場所は、被告に採用されることによって決定したものであって(この関係については後記2で示す。)、本件配転命令によって決まったものではないから、右命令が不当労働行為や人事権の濫用により無効であるか否かに関わらず、原告らの被告における地位に消長をきたすものではない。

してみれば、原告ら主張の本件配転命令に関する不当労働行為又は人事権の濫用については、立ち入った検討を加えるまでもなく、本訴請求の根拠とはなし得ないものというほかはない。

(三) 原告らは、(1)国鉄と被告等は実質的に同一であるから、国鉄の本件配転命令について被告が責任を負う、(2)国鉄の右命令は、承継法人の設立委員が定めるべき当該承継法人の職員の労働条件を国鉄が設立委員に代行して定めたものであるから、設立委員、ひいては被告が責任を負う、(3)改革法を前提にしても、本件配転命令が無効であれば、右命令を受けた職員は、従前の職場に勤務すべきことになるから、被告においても、右命令前の職場のおいて採用されたことになる旨主張する。

しかしながら、まず右(1)は、改革法上、国鉄の事業等は被告を含む承継法人が引き継ぐとされているものの、職員との労働関係については、当然承継するのではなく、国鉄の職員のうち、一部を被告等に採用させ、その余は清算事業団に残留させるという形をとったことが明らかであり、原告らの主張は、同法の解釈論としては支持し得ないものといわなければならない。

次に右(2)も、改革法二三条一項所定の労働条件は、同法施行規則九条一項において、①就業の場所及び従事すべき業務、②始業及び終業の時刻、休憩時間、休日、休暇並びに職員を二組以上に分けて就業させる場合における就業時転換、③賃金の決定、計算及び支払の方法、賃金の締切り及び支払の時期並びに昇給、④退職、⑤退職手当その他の手当、賞与及び最低賃金額、⑥職員に負担させるべき食費、作業用品その他、⑦安全及び衛生、⑧職業訓練、⑨災害補償及び業務外の傷病扶助、⑩表彰及び制裁、⑪休職に関する事項(右⑤ないし⑪については、設立委員等が定めない場合を除く。)と定められているところ、前判示の設立委員の定めた労働条件が、就業場所については、各会社の営業範囲内の現業機関等、出向を命ぜられた場合は出向先の就業場所と、極めて概括的な記載がなされていたにとどまることからしても、同法の定める労働条件が職員全体に共通する一般的な条件を意味し、個々の職員の具体的な勤務場所を予想したものではないことは明らかである。従って、本件配転命令による原告らの異動は、そもそも設立委員が定めるべき労働条件には該当しないというべきである。なお、付言すれば、同法上、設立委員と国鉄には命令ないし委任といった関係があるとは認められないし、同法案の国会における審議中の運輸大臣等の説明も、国鉄が承継法人の職員の採用に関する事務の一部を分担することの便宜ないし比喩的な説明の域を出ないものであって(この場合の事務は同法二三条二項所定のものであって、本件配転命令のような採用と直接関係のないものまで念頭に置いているとは考え難い。)、右認定判断の妨げとなるものではない。

また、右(3)も、仮に本件配転命令が無効であり、原告らが国鉄において右命令前の地位にあったとしても、直ちに被告においてそれと同じ地位にあるということはできない。即ち、国鉄における労働関係がそのまま被告に承継されるものでないことは、繰り返し判示しているとおりであり、被告が国鉄職員の国鉄退職時点における地位をそのまま被告における地位に読み替えて採用したのは、鉄道業務を継続しながら大量の職員を一時に採用するための方途であって、本来被告は採用に際し職員を配置する裁量があるというべきであり、原告らが従前の地位において被告に採用される権利を有していたとはいい難いし、実際にも、国鉄と被告の職制とは必ずしも一致せず、本件配転命令前の国鉄における職場に対応する被告における職場があるともいえない。

2  本件配属通知

(一) 本件配属通知は被告の設立委員がなしたものであるから、改革法二三条五項により被告のした行為とされることは明らかである。

(二) しかしながら、右通知は、国鉄における本件配転命令による異動後の勤務箇所、職名を被告におけるそれに機械的に読み替えて通知したものに過ぎず、それによって、原告らの国鉄における地位を変動させることのないことは明らかである。また、被告においては、右通知を受けた原告らが、昭和六二年四月一日、被告の設立とともに、被告との労働契約の締結により被告に採用され、本件配属通知に示された職務に就くことになったのであって、右通知は原告らの被告における地位に何ら変動を及ぼすものではなく(そもそも原告らに、被告における右通知前の職務というものはなく、右通知によって被告における地位が右通知前のそれより不利益になるということはあり得ない。)、右通知について不当労働行為や人事権の濫用を論ずることはできないといわざるを得ない。

3  以上によれば、原告らの請求はいずれも理由がないからこれを棄却すべきである。

(裁判長裁判官山本博 裁判官松吉威夫 裁判官神坂尚は、転補のため署名押印することができない。裁判長裁判官山本博)

別紙(二)(三)12、別表12〈省略〉

別紙(一)

発令一覧表

番号

氏名

前職

配転先

現職

原職場

(東日本旅客鉄道株式会社秋田支社)

前職場

(日本国有鉄道秋田鉄道管理局)

職名

配転先職場

(日本国有鉄道秋田鉄道管理局)

職名

発令日

(年月)

現職場

(東日本旅客鉄道株式会社秋田支社)

職名

1

小林 広秀

秋田保線区

人材活用センター

保線管理係

山形保線区

米沢支区

米沢保線

管理室

保線管理係

昭和

六四・一

山形保線区

機械グループ

施設係

秋田保線区

2

柴田 悟

同右

同右

山形保線区

山形支区

山形保線

管理室

同右

昭和

六三・一〇

山形保線区

山形支区

上ノ山保線

管理室

同右

同右

3

船木 千里

同右

重機副保線長

山形保線区

今泉保線

管理室

保線副管理長

昭和

六四・一

米沢保線区

機械グループ

施技係

同右

4

斉藤 剛

秋田保線区

秋田支区

保線管理係

山形建築区

建築技術管理係

昭和

六二・四

山形建築区

建築係

同右

5

田口 英康

秋田保線区

秋田支区

重機保線係

山形保線区

米沢支区

重機保線係

昭和

六三・一〇

山形保線区

機械グループ

施設係

秋田保線区

6

阿部 靖彦

東能代保線区大館支区

人材活用センター

同右

新庄保線区

新庄支区

同右

同右

新庄保線区

機械グループ

同右

大館保線区

7

竹島 公生

東能代保線区人材活用センター

保線管理係

山形保線区

山形支区

上ノ山保線

管理室

保線管理係

同右

山形保線区

山形支区

山形保線

管理室

同右

東能代保線区

8

原田 好太郎

同右

同右

山形保線区

山形支区

寒河江保線

管理室

同右

昭和

六二・四

山形保線区

山形支区

寒河江保線

管理室

同右

同右

9

高橋 晴彦

同右

重機保線係

新庄保線区

真室川支区

重機保線係

昭和

六三・一〇

新庄保線区

真室川派出所

同右

同右

10

園辺 誠幸

本荘保線区

人材活用センター

同右

山形保線区

山形支区

同右

同右

山形保線区

北山形保線

管理室

同右

本荘保線区

11

池田 隆

同右

保線管理係

山形保線区

今泉保線

管理室

保線管理係

昭和

六三・一〇

山形保線区

新在改軌開発

同右

同右

12

佐々木 茂美

横手保線区

人材活用センター

重機保線係

山形保線区

米沢支区

重機保線係

同右

米沢保線区

機械グループ

同右

横手保線区

13

小林 一幸

秋田信号通信区人材活用センター

電気技術係

新庄信号通信区

電気技術係

同右

新庄信号通信区

電機係

秋田信号通信区

14

皆川 浩之

羽後本荘電力区

事務係

同右

事務係

同右

同右

同右

羽後本荘電力区

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