大判例

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金沢地方裁判所 昭和63年(わ)122号 判決

本店所在地

石川県鳳至郡門前町字門前一九五一番邸

株式会社のむら

右代表者代表取締役

能村武由

本籍

石川県鳳至郡門前町字門前一九五一番邸

住居

右同所

会社役員

能村武由

昭和二年一月三〇日生

右両名に対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官藤原光秀出席のうえ審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人株式会社のむらを罰金一、五〇〇万円に、被告人能村武由を懲役一年にそれぞれ処する。

被告人能村武由に対し、この裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人株式会社のむらは、石川県鳳至郡門前町字門前一九五一番邸に本店を置き、呉服及び用品雑貨の販売等の事業を営むもの、被告人能村武由は、右会社の代表取締役としてその業務全般を統括しているものであるが、被告人能村は、被告人会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、呉服売り上げによる入金の一部を除外し、これを仮名の普通預金や定期預金とするなどの不正な方法により被告人会社の所得の一部を秘匿した上、

第一  昭和五九年二月一日から昭和六〇年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が六、一一一万二、一二四円であったのにもかかわらず、昭和六〇年三月三〇日、石川県輪島市河井町一五部九〇の一六所在の所轄輪島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が五四四万九、七一五円で、これに対する法人税額が一六五万〇、一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額二、五四三万八、四〇〇円と右申告税額との差額二、三七八万八、三〇〇円を免れ

第二  昭和六〇年二月一日から昭和六一年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が五、五六八万〇、一四七円であったのにもかかわらず、昭和六一年三月三一日、前記輪島税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が六二九万二、三八一円で、これに対する法人税額が一九〇万八、二〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額二、三〇八万三、二〇〇円と右申告税額との差額二、一一七万五、〇〇〇円を免れ

第三  昭和六一年二月一日から昭和六二年一月三一日までの事業年度における被告人会社の実際の所得金額が六、五五八万九、六三一円であったのにもかかわらず、昭和六二年三月三一日、前記輪島税務署において、同税務署長に対し、所得金額が二、五三九万四、二〇六円で、これに対する法人税額が九九七万七、六〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書を提出し、そのまま納期限を徒過させ、もって不正の行為により被告人会社の右事業年度の正規の法人税額二、七三八万二、一〇〇円と右申告税額との差額一、七四〇万四、五〇〇円を免れ

たものである。

(証拠の標目)

この欄の( )内の算用数字は、検察官請求の証拠等関係カードの番号を表わす。

判示全部の事実について

一  被告人能村の検察官に対する各供述調書(36、37)

一  被告人能村の大蔵事務官に対する各質問てん末書(32ないし35)

一  能村武資の検察官に対する供述調書(29)

一  能村武資(25、26、28)、谷内口昭子(30)及び高野外志夫(31)の大蔵事務官に対する各質問てん末書

一  大蔵事務官作成の査察官調査書七通(13、15ないし20)

一  登記官作成の商業登記簿謄本(24)

判示第一の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書二通(1、9)

一  大蔵事務官作成の「脱税計算書」と題する書面(4)

一  「法人税決議書」と題する書面(6)

判示第二、第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(23)

判示第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書二通(2、10)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書二通(21、22)

一  大蔵事務官作成の「脱税計算書」と題する書面(5)

一  「法人税決議書」と題する書面(7)

判示第三の事実につき

一  大蔵事務官作成の証明書二通(3、11)

一  大蔵事務官作成の査察官調査書(14)

一  大蔵事務官作成の「脱税計算書」と題する書面(39)

一  「法人税決議書」と題する書面(8)

(法令の適用)

被告人両名の判示各所為は各事業年度ごとに法人税法一五九条一項、被告人会社については、さらに同法一六四条一項に該当するところ、被告人能村については各罪につき所定刑中懲役刑を選択することとし、以上は刑法四五条前段の併合罪であるから、被告人会社については同法四八条二項により合算した金額の範囲内で罰金一、五〇〇万円に、被告人能村については同法四七条本文、一〇条により犯情の最も重い判示第一の罪の刑に法定の加算をし、その刑期の範囲内で懲役一年にそれぞれ処し、被告人能村に対し、同法二五条一項を適用してこの裁判確定の日から三年間、その刑の執行を猶予することとする。

(量刑の理由)

本件は、被告人能村が、被告人会社の法人税を、三年度にわたって、合計六、二三六万円余りも免れたものであり、その額が大きいだけでなく、そのほ脱率も、昭和六〇年一月期分が九三・五%、昭和六一年一月期分が九一・七%、昭和六二年一月期分が六三・五%と高率である。

犯行動機は、主として事業拡大資金を得るためと認められ、犯行態様は、売上金の一部を除外してこれを仮名預金にするなどして所得の一部を隠匿していたものであり、これらは、被告人会社の代表取締役である被告人能村が直接指示して行なわせていた。

申告納税制度を採る租税制度のもとでは、国民が所得を正直に申告することを前提としているから、不正の手段で所得を隠して税金を逃れることは、善良なる納税者の犠牲において違反者のみが不法の利益を得るものであって、極めて反社会社性の強い犯罪である。

以上の諸事情に徴すると、被告人会社及び被告人能村の各刑事責任は重い。

他方、脱税した三年度分の法人税については、修正申告をしたうえ、本税、延滞税及び重加算税などをすでに全額納付ずみであること、被告人能村は、前科前歴がなく、本件について深く反省し、近く地元の商工会副会長の職を辞任する予定であるほか、本件の終了次第被告人会社の代表取締役も辞任する決意であることなど酌むべき情状も認められるので、これらを総合考慮して、主文のとおり量刑した。

よって、主文のとおり判決する。

(裁判官 角田進)

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