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金沢家庭裁判所 昭和62年(少)1572号 決定

少年 M・I(昭42.7.10生)

主文

少年を中等少年院に送致する。

少年院に収容する期間を昭和62年12月10日から1年間と定める。

理由

1  非行事実

少年は、昭和62年4月23日当庁において監禁保護事件により金沢保護観察所の保護観察に付され、現に保護観察中のものであるが、昭和62年5月6日から家出し、暴力団組員として無為徒食の生活を送つており、その間同年6月4日には監禁罪を犯して同年8月4日に逮捕され、同年10月13日に懲役10月執行猶予3年の判決を受けたが、再び暴力団事務所に戻り家には寄りつかないで徒食しているものであつて、このまま放置すれば暴力団を背景とした同種犯行を犯す虞れがあるものである。

2  適条

少年法3条1項3号ロ、ハ

3  処遇理由

少年は、現在上記の保護観察中であり、その間昭和62年7月10日に20才に達したものであるが、金沢保護観察所長から昭和62年11月17日上記虞犯事由に基づき犯罪者予防更生法42条1項により当裁判所に通告されたものである。

少年は、昭和61年3月高校を卒業したのち、工員などとして就労したが、同年12月20日ころからは徒遊していたところ、保護者から生活態度を注意されたこともあつて昭和62年2月5日に家出し、以前属していた暴走族グループの仲間を介して暴力団の組員となり、同組員らと前件非行を犯したが、生活の乱れが短期間であり、更生を誓つていたことから保護観察に付され、保護観察開始に際し特別遵守事項として、暴力団とは縁を切り定職について真面目に働くこと、家出、無断外泊をしないことなどが定められたのであるが、保護観察官や担当保護司の指導、監督を何ら受けることなく、昭和62年4月27日から同年5月2日までの6日間稼働したのみで、同月6日には家出して元の暴力団に舞い戻り、無為徒食の生活を送つていたものである。そして、その間同年6月4日に上記暴力団組員らと同組を離脱しようとした少年を組事務所に連れ戻して監禁する事件を犯し、同年8月4日逮捕され、同年10月13日懲役10月、執行猶予3年の判決を受けたが、その後も再び上記暴力団での生活に戻り家には寄りつかないで徒食していたものであり、自己の生活態度に対する反省に欠け、暴力団への親和感が強く、勤労意欲及び更生意欲が欠如している。

他方、保護者は、少年の度重なる家出と暴力団への加入に対処すべき方策を見出せず、少年の自覚を促す意味でも施設収容による矯正教育もやむを得ないと考えている状態であり、少年に対する適切な指導監督を期待し難いと言わざるを得ない。

以上の事実に照らせば、保護観察によるその改善は期待できない状態にあると言わざるを得ず、施設収容による矯正教育により、暴力団からの離脱並びにその生活態度及び価値観の改善を図るのが相当であると考える。そして、上記の事実によれば、中等少年院に主文掲記の期間収容するのが適当であると解する。

よつて、犯罪者予防更生法42条、少年法24条1項3号、少年審判規則37条1項を適用して主文のとおり決定する。

(裁判官 新崎長政)

〔参考〕通告書

通告書

昭和62年11月17日

金沢家庭裁判所 支部 殿

金沢保護観察所長 ○○ 印

下記の者は、少年法第24条第1項第1号の保護処分により、当保護観察所において保護観察中のところ、新たに同法第3条第1項第3号に掲げる事由があると認められるので、犯罪者予防更生法第42条第1項の規定により通告する。

氏名

年齢

M・I

昭和42年7月10日生

本籍

石川県金沢市○町×丁目×番地

住居

石川県石川郡○○町○○町××番地(金沢市○○町×番×号○○××号A方)

保護者

氏名

年齢

M・H

大・〈昭〉9年1月22日生

住居

石川県石川郡○○町○○町××番地

本人の職業

無職

保護者の職業

会社員

決定裁判所

金沢家庭裁判所支部

決定の日

昭和62年4月23日

保護観察の経過及び成績の推移

別記一のとおり

通告の理由

別記二のとおり

必要とする保護処分及びその期間

少年院送致収容期間1年間

参考事項

添付書類

〈1〉本人に対する質問調書2通

〈2〉父に対する質問調書1通

〈3〉電話聴取書写2通

別記一

保護観察の経過及び成績の推移

年月日

経過

62. 4.23

保護観察決定。

父同伴にて当庁へ出頭し、係官の面接をうけ、保護観察中守るべき遵守事項として、犯罪者予防更生法第34条第2項各号の一般遵守事項のほか、特別遵守事項として、

〈1〉暴力団とは縁を切り、定職について真面目に働くこと

〈2〉家出、無断外泊をせず、何事も保護者とよく話合うこと

〈3〉他人に対し粗暴なふるまいをしないこと

〈4〉毎月進んで担当保護司を訪ね、生活状況の報告することを定めたところ、本人もこれを守り、更生に励む旨の決意を示し、誓約押印した。

開始にあたり、別添処遇計画を樹て、担当者として○○保護司を指名した。

62. 4.28

本人から担当者のもとへ電話にて、担当者宅の所在が判らないと言ってきたので、担当者が本人宅へ往訪し、初回面接した。

特に担当者のもとへは毎月2回来訪すること、暴力団とのかかわりを一切なくすよう指示される。

62. 5.27

担当者から電話にて「5月初旬から地方選挙で多忙だったため本人と接触できなかったが、本日父から聞くところによると、本人は、昭和62年5月6日家出し、以来家に寄りつかず所在不明である」との事故報告受理。

62. 5.30

担当者から電話にて「本人の父が、28日暴力組織○○組へ電話照会するも、応対者はM・Iはおらんといって切ってしまった。これまで無理に連れ戻してきても、すぐ組へ戻ってしまうので、父も本人に対する対応が消極的になってきている」との連絡受理。

62. 6. 1

担当者は、主任官の指示を受けて、父に対し所轄警察署宛保護願を提出するよう助言した。

62. 6.28

担当者が、その後の状況をきくため父に面会したところ、「保護願もなにもない。○○警察署において前の事件と同様組を脱退した者を連れ戻すために兄貴分と同行し暴行した疑いで指名手配中である」旨聴取。

62. 9.14

主任官が○○警察署へ電話照会したところ「本人を8月6日監禁容疑で検挙し、身柄付で送検した。身柄は未決監に勾留と思う」旨聴取。引きつづき金沢地方検察庁○○検事に照会したところ、「8月6日身柄付で受理し、8月14日起訴したが、未だ第1回公判の期日は決まっていない。共犯者が保釈で出ているので、保釈申請の出る可能性もある」旨聴取。

保釈の際は、当庁へ連絡方依頼する。

62.10. 5

担当者から事故報告受理。身柄拘束中であり、○○組の者が色々と差入れをしておりこれと手を切る事はむつかしく、父も仕方がないと思っている。

62.10.14

金沢地方検察庁から、「再犯(逮捕監禁)につき10月13日金沢地方裁判所において懲役10月執行猶予3年の判決をうけ、釈放した」旨聴取。

62.10.15

本人宛呼出状を自宅並びに小松市○町○××の×○○組内気付で送付

(指定日昭和62年10月21日)

62.10.21

○○組で、呼出状をうけとり出頭。質問調査。調査後、自宅に戻り、早期に定職につくよう指導し、本人も了解したので、父にもTELにより受入れ方調整のうえ帰らせた。

62.11. 9

担当者から「本人は10月21日の当庁出頭後自宅には居住していない。

再び組事務所にいるものと思う」旨連絡あり。本人宛呼出状を送付

(指定日昭和62年11月7日)

62.11.12

父来庁、質問調書(乙)作成

62.11.17

本人出頭、質問調書(甲)作成

成績の推移

昭和62年4月「普通」、昭和62年5月以降所在不明につき評定除外。

別記二

通告の理由

保護観察の経過及び成績の推移並びに本人及び関係人(父)に対する質問調書からみると、本人は、

1) 保護観察以来就労したのは、昭和62年4月27日から5月2日までの6日間のみであり、昭和62年5月6日家族に無断で家を飛出し、暴力団○○組幹部B(逮捕監禁、傷害罪で服役中)を頼って暴力団生活に戻り、無為徒食の生活を続けている(少年法第3条第1項3号八該当)

2) 昭和62年5月6日家出後昭和62年6月初旬まで上記B方に若中として止宿し、昭和62年6月4日B、Cらと共に逮捕監禁事件をおこし、検挙を免れる目的で友人宅を転々と泊り歩いた。

その後の昭和62年8月4日検挙され10月13日の判決をうけるまで身柄拘東をうけたが、釈放後再び暴力団○○組事務所に舞戻るなど、正当な理由がなく家庭に寄りつかない(少年法第3条第1項3号ロ該当)ことが認められ、質問調査にあたって暴力団からは離脱できない旨言明しており、当庁の指導にも従がわず、自ら更生に励もうとの意欲が欠如しており、保護観察をもって更生は期待できないと思料する。

更に期間中逮捕監禁の再犯をおかし、昭和62年10月13日金沢地方裁判所において懲役10月執行猶予3年の判決を受けたがこれは、保護観察となった非行と同一罪種であり、今後も暴力団を背景とした同種再犯を重ねる虞れがある。

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