大判例

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長崎地方裁判所 昭和33年(ワ)504号 判決

原告 長崎信用金庫

被告 有限会社桑原漁網商店

主文

一、被告は、原告に対し、金四十五万千五百円及び之に対する昭和三十三年七月二十六日からその支払済に至るまでの年六分の割合による金員を支払はなければならない。

二、訴訟費用は被告の負担とする。

事実

原告は、

主文第一項と同旨の判決を求め、その請求の原因として、

一、原告は、被告会社が、訴外比留木文雄に対し、昭和三十三年五月六日、振出し、同訴外人が、訴外有限会社東洋貿易商事に対し、同日、白地裏書を以て、譲渡し、原告が、同日、同訴外会社から裏書譲渡を受けた、

額面 金四十五万千五百円、

支払期日 昭和三十三年七月二十五日、

支払地、振出地 共に、長崎市、

支払場所 株式会社親和銀行大波止支店

なる約束手形一通の所持人であつて、その支払期日に、その支払場所に於て、呈示し、その支払を拒絶されたものである。

二、而して、被告は、未だ、その支払を為して居ないので、右手形に基いて、被告に対し、右手形金及び之に対するその支払期日の翌日たる昭和三十三年七月二十六日からその支払済に至るまでの手形法所定の年六分の割合による利息金の支払を命ずる判決を求める。

と述べ、

立証として、

甲第一号証を提出した。

被告は、

原告の請求を棄却する旨の判決を求め、答弁として、

被告が、訴外比留木文雄を受取人として、本件手形を振出した事実及び原告が、現に、之を所持して居る事実は、共に、之を認めるが、裏書譲渡の事実は、孰れも、不知。

と述べ、

甲第一号証は、振出部分の成立は、之を認めるが、裏書部分の成立は、不知と答へた。

理由

一、被告が、訴外比留木文雄を受取人として、本件手形を振出した事実及び原告が、現に、之を所持して居る事実は、共に、当事者間に争のないところである。

二、而して、本件手形について、原告主張の各裏書が為され、それが原告に至るまで、形式的に、連続して居ることは、弁論の全趣旨によつて、本件手形であることについて、当事者間に争のないところであると認められるところの甲第一号証によつて、明白なところであるから、原告は、本件手形の違法の所持人であると云はなければならない。従つて、原告が、右手形に基いて、その振出人たる被告に対し、その権利を行使し得ることは、多言を要しないところである。

三、被告は、本件手形について、原告主張の各裏書譲渡が為された事実に対し、不知を以て答へ、その事実のあることを争つて居るのであるが、手形の裏書譲渡については、その所持人に於て、その裏書が、自己に至るまで、形式的に連続して居ることを証明しさへすれば、その事実のあつたことが、法律上推定され、その手形の所持人は、その手形の権利者として、その手形上の権利を行使し得るものとされて居るのであるから、その手形の所持人が、その手形の実質上の権利者であることを否認する者は、右推定を覆へすに足りる事実のあることを、積極的に、主張、立証しなければならないのであつて、単に、その裏書譲渡の為された事実のあることを争ふだけでは、右推定を覆へすことは出来ないものであるところ、被告は、前記の通り、単に、その事実のあることについて、不知を以て答へ、その事実のあることを争つて居るに過ぎないものであるから、前記の様に、法律上の推定を受けることは当然の事理に属することであると云はざるを得ないものである。

尚、被告は、甲第一号証の裏書部分の成立について、不知を以て答へて居るのであるが、裏書の連続に関して要求されるところのものは、形式的なそれがあつて、形式上、裏書が成立し、それが連続して居さへすれば足りるものであるところ、右甲第一号証の各裏書が、形式上、裏書として、何等の欠くるところもないものであつて、而も、それが、所持人に至るまで連続して居ることが右各裏書自体に徴して、明白なところであるから、右甲第一号証の裏書部分は、その裏書の形式的連続を証明する証拠として、何等の瑕疵もないものである。従つて、その成立について、不知を以て、認否が為されて居ても、その真正の成立の証明を俟たないで、証拠として採用し得るものであることは、多言を要しないところである。

四、而して、原告が、本件手形を、その支払期日に、その支払場所に於て、呈示し、その支払を拒絶されたこと、及びその後に於てもその支払が為されずに、現在に至つて居ることは、弁論の全趣旨と之によつて成立について当事者間に争がないと認められるところの甲第一号証に添付の付箋とによつて、之を肯定することが出来るから、原告は、被告に対し、本件手形に基いて、その主張の金員の支払を求めることが出来る。

故に、その支払を求める原告の本訴請求は、正当である。

五、仍て、原告の請求を認容し、訴訟費用の負担について、民事訴訟法第八十九条を適用し、主文の通り判決する。

(裁判官 田中正一)

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