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静岡地方裁判所 平成2年(ワ)399号 判決

静岡県清水市八坂南町一番三四号

原告

現代建設株式会社

右代表者代表取締役

上野富吉

右訴訟代理人弁護士

中村源造

檜山玲子

静岡市追手町五番一号

被告

静岡市

右代表者市長

天野進吾

右訴訟代理人弁護士

向坂達也

主文

原告の請求を棄却する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

第一  当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告は、別紙物件目録二記載の工法からなる別紙物件目録一記載の一般廃棄物最終処分場を使用してはならない。

2  被告は、別紙物件目録二記載の工法からなる別紙物件目録一記載の一般廃棄物最終処分場を廃棄せよ。

3  訴訟費用は被告の負担とする。

二  請求の趣旨に対する答弁

主文同旨

第二  当事者の主張

一  (請求原因)

1  原告は、左記の特許権(以下「本件特許権」といい、その発明を「本件発明」という。)を有する。

(一) 発明の名称 一般及び産業廃棄物の埋立処分地造成工法

(二) 出願日 昭和五二年七月一日

(三) 出願公告日 昭和六〇年五月二二日

(四) 登録日 平成二年二月一五日

(五) 登録番号 特許第一五四四九八七号

2  本件発明の特許出願の願書に添付した明細書(平成元年三月二八日付手続補正書によって補正した後のもの。以下「本件明細書」という。)の特許請求の範囲の記載は、次のとおりである。

「埋立処分地造成に際し廃棄物の流出を防止するための側面擁壁1、水勾配を有する底面2及び底面勾配下辺に沿って集水渠3を備えた正方形、矩形またはこれに類似の形の埋立用ピットを掘削し、ピット及び集水渠内面をすべて塩化ビニール又は酢酸ビニールの耐久性且つ弾力性のある止水シート4でライニングして遮水工事を行い、集水渠中央部にはコンクリート製又は塩化ビニール製の多孔管5を設置してなる一般及び産業廃棄物の埋立処分地造成工法において、上記多孔管外部には砂利砕石類7を内部には小砂利類6を充填し、多孔管末端は金網にて小砂利止めを行うとともに上部に排気扇8を備え、底部に多孔管より排水する排水を貯留せしめる排水貯留枡9を有する堅型排気管10を設けて該多孔管と接続させ、ピット内排水を集水渠及び多孔管外部の砂利砕石類7と多孔管内の小砂利類6に付着した微生物及び細菌による浄化作用にて浄化しつつ上記排水貯留枡9中に流入させ、排水貯留枡9中にはその水位に応じて作動するフロートスイッチ付水中ポンプ11を設置し、上記排水及び有機物の分解により生ずるガス類についてそれぞれ水中ポンプ11により排水を排水管を通じて地上に放出し、また排気扇8によりガス類を排気管10を通じて地上に放出し、排水が排水基準値以上のときは地上の排水処理設備13により排水基準値以下に処理後放流することを特徴とする一般及び産業廃棄物の埋立処理地造成工法」

3(一)  本件発明の構成要件を文節すれば次のとおりである。

(1) 埋立処分地造成に際し廃棄物の流出を防止するための側面擁壁1、水勾配を有する底面2及び底面勾配下辺に沿って集水渠3を備えた正方形、矩形またはこれに類似の形の埋立用ピットを掘削し、

(2) ピット及び集水渠内面をすべて塩化ビニール又は酢酸ビニールの耐久性且つ弾力性のある止水シート4でライニングして遮水工事を行い、

(3) 集水渠中央部にはコンクリート製又は塩化ビニール製の多孔管5を設置してなる一般及び産業廃棄物の埋立処分地造成工法において、

(4) 上記多孔管外部には砂利砕石類7を、内部には小砂利類6を充填し、

(5) 多孔管末端は金網にて小砂利止めを行うとともに上部に排気扇8を備え、

(6) 底部に多孔管より排水する排水を貯留せしめる排水貯留枡9を有する堅型排気管10を設けて該多孔管と接続させ、

(7) ピット内排水を集水渠及び多孔管外部の砂利砕石類7と多孔管内の小砂利類6に付着した微生物及び細菌による浄化作用にて浄化しつつ上記排水貯留枡9中に流入させ、

(8) 排水貯留枡9中にはその水位に応じて作動するフロートスイッチ付水中ポンプ11を設置し、上記排水及び有機物の分解により生ずるガス類についてそれぞれ水中ポンプ11により排水を排水管を通じて地上に放出し、

(9) また、排気扇8によりガス類を排気管10を通じて地上に放出し、

(10) 排水が排水基準値以上のときは地上の排水処理設備13により排水基準値以下に処理後放流する

ことを特徴とする一般及び産業廃棄物の埋立処理地造成工法

(二)  本件発明の作用効果は次のとおりである。

(1) 従来の防水方法であるアスファルト防水、モルタル防水工法と比較し、シートの耐久性、耐薬品性等にすぐれるなど完全な防水層を形成することができ、施行が容易で工期が短縮できかつ工事費が安く上がり経済的である。

(2) 多孔管外の比較的径の大きい砂利採石類、多孔管内の小径砂利類を用いることにより、微生物、細菌の繁殖と共に排水の浄化と濾過作用をその微生物、細菌の浄化作用を介し浄化する。

(3) 埋立ピット内に設けた貯留枡に下端を接続した排気管の上部に排気扇を設けることによりピット内廃棄物の発生ガスや雨水類をピット下部に沈降させて分解を促進させ分解後のガス類を強制的に外気に排出させることができる。

4  被告は、別紙物件目録一記載の一般廃棄物最終処分場(以下「被告最終処分場」という。)を所有し、業として使用している。

5  被告最終処分場の工法の技術的構成は、別紙物件目録二記載のとおりであり、右は本件発明の構成要件をすべて充足するから、本件発明の技術的範囲に属する。

よって、原告は被告に対し、本件特許権に基づき、被告最終処分場の使用の差止及び被告最終処分場の廃棄を求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は認める。

2  同2の事実は認める。

3  同3の(一)は認める。

同3の(二)の(1)は否認し、同(2)、(3)の作用効果についての記載が、本件明細書にあることは認める。

4  同4の事実は認める。

5  同5の事実は否認し、主張は争う。

被告最終処分場の工法の技術的構成が原告主張と異なる点の一例をあげれば、被告最終処分場においては、集水管に多孔管ではなく透水管を使用しており、その集水管内部には小砂利類等を全く充填しておらず、したがって集水管の末端に金網も設けていない。また、集水管末端には排気扇は設置していない。

したがって、被告最終処分場の技術的構成は、少なくともその一部が本件発明の構成要件を充足しておらず、本件発明の技術的範囲に属しないことは明らかである。

(原告の反論)

被告は、被告最終処分場の技術的構成が本件発明の構成要件の一部を充足しないことをもって、本件発明の技術的範囲に属しない旨主張するが、仮に右各点についての工法が被告の主張のとおりであるとしても、次のとおり、本件発明の技術的範囲に属しないとの主張はいずれも失当である。

すなわち、集水管に多孔管を用いず透水管を用いているとしても、多孔管の代わりに透水管を用いることは多孔管を用いることと均等手段である。

小砂利類を集水管に充填していないとしても、右は本件発明の不完全利用に過ぎない。

被告最終処分場において排気扇を使用していないとしても、被告最終処分場において排気作用がされていることは明らかであるから、右の点は当業者にとっては単なる慣用手段の付加削除に相当する。

(被告の再反論)

原告は、前記した構成要件の一部の欠缺は均等手段、不完全利用又は慣用手段の付加削除である旨を主張するが、本件発明が特許されたのは、「多孔管外部には砂利砕石類を内部には小砂利類を充填し、多孔管末端は金網にて小砂利止めを行うとともに上部に排気扇を備え、底部に多孔管より排水する排水を貯留せしめる排水貯留枡を有する堅型排気管を設けて該多孔管と接続させ」という、公知技術にない新規な構成を採ることにより、公知技術によっては予測できなかった効果を奏することができたからであるので、右構成要件の一部の欠缺を均等手段等とする原告の主張は明らかに失当である。

第三 証拠

本件訴訟記録中の書証目録及び証人等目録の記載を引用する。

理由

一  請求原因1、同2、同3の(一)及び同4の各事実は当事者間に争いがない。

二  原告は、被告最終処分場の工法の技術的構成が別紙物件目録二記載のとおりである旨主張するが、右事実を認めるに足りる証拠はなく、かえって甲第三号証の二、乙第二号証の三、第三号証及び証人佐々隆史の証言によれば、被告最終処分場において用いられている工法においては、原告が多孔管と表現し、被告が透水管と表現している集水管に小砂利類が充填されておらず、その集水管末端に金網による小砂利止めもされていないし、また、集水管末端上部に排気扇が設けられていないことが認められ、したがってその余の判断に及ぶまでもなく、原告の本訴請求は理由がないものといわなければならない。

三  原告は、右の各点について、それらは本件発明の不完全利用又は慣用手段の付加削除に相当するものである旨主張するが、右主張が被告最終処分場に用いられている工法のうち右の各点については証拠によって認定された右構成であるとの主張を前提とするものでない限り、それ自体失当といわざるを得ないし、また、仮に右認定された工法を前提として、本件発明と対比した場合においても、乙第一号証及び弁論の全趣旨によれば、本件発明が特許されたのは、「多孔管外部には砂利砕石類を内部には小砂利類を充填し、多孔管末端は金網にて小砂利止めを行うとともに上部に排気扇を備え、底部に多孔管より排水する排水を貯留せしめる排水貯留枡を有する堅型排気管を設けて該多孔管と接続させ」という、公知技術にない新規な構成を採ることにより、公知技術によっては予測できなかった「外孔管外の砂利砕石類を透過する間において、その集水の濾過作用が図られながら多孔管的に導かれ、その後多孔管内の径の小さい小砂利類によって更に浄化作用がなされ、その際、多孔管外では比較的径の大きい砂利砕石類であるため集水渠内での微生物及び細菌の繁殖を助長せしめるとともに多孔管内では径の小さい小砂利類を用いて更に、その微生物・細菌の繁殖とともに排水の浄化と濾過作用をその微生物及び細菌の浄化作用を介して浄化し、また多孔管の外部には径の大きい砂利砕石類を充填したので多孔管に設けられている多孔が目詰まりすることがなく、多孔管末端に備えられた金網により多孔管内の小砂利類が流下されるのが防げる。更に埋立ピット内に設けた貯留枡に下端を接続した排気管の上部に排気扇を設けたことにより、該排気扇による排気が貯留枡を介してピット内を負圧にし、ピット内廃棄物の発生ガスや雨水類をピット下部に沈降させて分解を促進させ、分解後のガス類を強制的に外気に排出させることができる。」との効果を奏することができたからであると認められるのであるから、集水管内部に小砂利類が充填されておらず、集水管末端に金網による小砂利止めがされてもいないこと、あるいは集水管末端上部に排気扇が設けられていないという本件発明の構成要件の明らかな欠缺をもって、本件発明の不完全利用あるいは慣用手段の付加削除に相当するものであるということはできない。

そうすると、いずれにせよ、被告最終処分場の工法の技術的構成が本件発明の構成要件を充足し、その技術的範囲に属するものと認めることはできない。

四  よって、原告の本訴請求は理由がないから、これを棄却することとし、訴訟費用の負担につき民事訴訟法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 荒川昂 裁判官 石原直樹 裁判官 森崎英二)

別紙物件目録

一 名称 静岡市沼上最終処分場

所在地 静岡市北沼上三八七の一

埋立地面積 三万六〇〇〇平方メートル

二 被告最終処分場の工法

「埋立処分地造成に際し廃棄物の流出を防止するための側面擁壁1、水勾配を有する底面2及び底面勾配下辺に沿って集水渠3を備えた正方形、矩形またはこれに類似の形の埋立用ピットを掘削し、ピット及び集水渠内面をすべて塩化ビニール又は酢酸ビニールの耐久性且つ弾力性のある止水シート4でライニングして遮水工事を行い、集水渠中央部にはコンクリート製又は塩化ビニール製の多孔管5を設置してなる一般及び産業廃棄物の埋立処分地造成工法において、右記多孔管外部には砂利砕石類7を内部には小砂利類6を充填し、多孔管末端は金網にて小砂利止めを行うとともに上部に排気扇8を備え、底部に多孔管より排水する排水を貯留せしめる排水貯留枡9を有する堅型排気管10を設けて該多孔管と接続させ、ピット内排水を集水渠及び多孔管外部の砂利砕石類7と多孔管内の小砂利類6に付着した微生物及び細菌による浄化作用にて浄化しつつ右記排水貯留枡9中に流入させ、排水貯留枡9中にはその水位に応じて作動するフロートスイッチ付水中ポンプ11を設置し、右記排水及び有機物の分解により生ずるガス類についてそれぞれ水中ポンプ11により排水を排水管を通じて地上に放出し、また排気扇8によりガス類を排気管10を通じて地上に放出し、排水が排水基準値以上のときは地上の排水処理設備13により排水基準値以下に処理後放流することを特徴とする一般及び産業廃棄物の埋立処理地造成工法」

(別添図面参照)

(本件発明による造成工法の実施例を示す図面)

〈省略〉

図面の簡単な説明

第1図は本発明埋立造成地の平面図、第2図は縦断面図、第3図は横断面図、第4図は本発明埋立造成地のピット、集水渠及び排気管の部分断面図である。

1……側面擁壁、2……ピット底面、3……集水渠、4……止水シート、5……多孔管、6……小砂利、7……砂利砕石類、8……換気扇、9……排水貯留枡、10……コンクリート製竪形排気管。11……フロートスイッチ付水中ポンプ。

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