大判例

20世紀の現憲法下の判例を掲載しています

高松高等裁判所 昭和25年(う)107号 判決

控訴人 被告人 山本美之助

検察官 塩田末平関与

主文

原判決を破棄する。

被告人を判示第一の事実につき罰金三千円に、第二の事実につき罰金一万二千円に処する。

右各罰金を完納することができないときは金二百円を一日に換算して労役場に留置する。

押収に係る葉煙草、手刻煙草、手巻煙草巻紙、巻器具、巻台はこれを没収する。

原審の訴訟費用は被告人の負担とする。

理由

弁護人二反田真一の控訴趣意は原判決の量刑は不当である。本件犯行は全く日々の生活貧窮の結果已むなきに出たもので、他に前科なく真に気の毒な被告人である。若し罰金の実刑を科せられると労役場留置を受けるのは必定で家族の生活が不可能となる。本件後深く悔悟し将来断じて違反行為を繰返さないことを誓つている被告人に対しては特に執行猶予の判決を願うといのであるが、記録を調べ所論その他の諸般の情状を考慮しても、原審の科刑を重きに失し不当であると認め得ないから論旨は理由がない。

しかし職権で調べると、

原判決は二個の旧煙草専売法違反事実を認めながら、主文において一個の罰金刑を科している。尤もその判決理由によれば、同法第六四条に則り原判示第一事実につき罰金三千円、第二事実につき罰金一万円を各量定し、これを合算した罰金一万五千円を主文に掲記したことが明瞭であるけれども、同法条により刑法第四八条第二項の規定の適用が排除せられる以上、違反事実に応ずる個数の罰金を主文において併科すべきものと解すべきである。これを主文において合算すべき法令上の根拠なく、又刑法第一八条第三項にいう罰金を併科した場合とは、主文で二個以上の罰金を言渡した場合を指すものと解せられるから、数個の罰金を主文で合算すると否とは同条項の適用上も差異を生じ得るのであつて、原判決には上叙の点に法律の解釈適用を誤つた違法があり破棄を免れない。

よつて刑事訴訟法第三九七条第三八〇条により原判決を破棄し、同法第四〇〇条但書に則り直に次の通り判決する。

原判決が証拠により確定した事実を法律に照すと、被告人の判示第一の所為は昭和二四年法律第一一一号たばこ専売法附則第七項により適用せられる旧煙草専売法第五八条に、第二の所為は同法第五七条第二項第三四条第一項に当り、以上は刑法第四五条前段の併合罪であるから、前記旧煙草専売法第六四条を適用し、所定の各罰金額の範囲内で被告人を主文第二項の刑に処し、刑法第一八条により罰金不完納の場合の労役場留置の期間を定め、主文掲記の押収物件は前記旧煙草専売法第五八条及び第五七条第二項刑法第四九条第二項に則りこれを没収し、原審訴訟費用の負担につき刑事訴訟法第一八一条を適用して主文の通り判決する。

(裁判長判事 満田清四郎 判事 太田元 判事 横江文幹)

「大判例」は20世紀で日本国憲法下の裁判例のうち,公刊物に掲載されたものをまとめたインターネット判例集です。原則として公刊されたものをそのまま載せています。

憲法により判決は公開とされており,法曹および法律研究者に利用されているものです。その公共性と平等主義の観点から,送信防止措置または改変には一切応じませんのでご了承ください。

©daihanrei.com