大判例

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鳥取地方裁判所 昭和42年(借チ)1号 決定

主文

1  別紙(二)記載の借地権の借地条件につき、そのうち、非堅固建物の所有を目的とする借地条件を「堅固建物の所有を目的とするもの」に変更し、かつ、存続期間を「この裁判確定の日から五〇年」と、借賃の金額を「一ケ月二万円」とそれぞれ変更する。

2  申立人は相手方に対し一二五万円を支払え。

理由

1  本件申立の要旨は、別紙(二)記載の借地権の借地条件につき、別紙(一)記載の目的土地(以下単に本件土地という)が防火地域の指定をうけたこと、その附近の土地の利用状況の変化、その他の事情の変更を理由として、非堅固建物の所有を目的とするものから堅固建物の所有を目的とするものに借地条件の変更を求める、というにある。

2  本件において調べた資料によると次の事実が認められる。

(1)  本件土地を含む土地一八四m2八四(五五坪九二)(登記簿上五六坪七三)上には、もと、相手方所有の建物があり、これを申立人の妻の父上村文平が昭和五年頃より相手方から賃借していたが、この建物が昭和一八年の震災で潰れ、文平において右建物の廃材を用いて同地上に建物を建築したため、文平と相手方との間で右建物の所有権等について紛争を生じていた。申立人は昭和三三年頃文平との間で同人から右建物を譲り受け、かつ、一応、相手方に右土地の賃借の敷金として三万円支払い、借賃を一ケ月二、〇〇〇円(その後三、〇〇〇円となる)と定めて相手方から右土地を賃借したが、右建物の所有権についての紛争がなお続いたので、申立人は昭和三五年七月一日頃相手方との間で同日付であらためて右土地につき別紙(二)記載のような借地条件の賃貸借契約を結んで右土地を賃借するとともに右建物に対する相手方の所有権を認めて右建物を五万円で買いとつた上これを取りこわして現在の非堅固建物の木造店舗等を建築した。

(2)  昭和二七年八月二日付(建設省告示第一〇九六号)および昭和二八年六月二日付(同省告示第九六二号)をもつて本件土地の一部に防火地域の指定がなされた。

(3)  本件土地を含む前記土地一八四m2八四は国鉄鳥取駅から鳥取県庁に通ずる商店街いわゆる若桜街道(これは現在鳥取市内で最も繁華な商店街である)に面しているところ、右土地は同駅からやや遠いところに位置しているので近年まではこの土地の近隣にはなお木造建物の商店が多かつたが、道路の整備等に伴い最近においてはこの附近一帯の土地の商店街としての発展が顕著であり、鉄筋ビル等の建築も盛んである。

(4)  申立人は有限会社瀧尾ウインド製作所の経営者として前記土地一八四m2八四上にいずれも木造の工場および店舗を構え、陳列棚、陳列ケース等陳列器具の製造販売の営業をなしているが、昭和四二年度一般国道五三号線1―3―1停車場県庁線街路事業の施行による右店舗前面の道路の拡張により右土地の一部(二五m2一八)が切り取られることになり、右店舗も一部切除されることになつている。従つて、申立人はその店舗の広さを確保し営業実績をさげないためにもその残地たる本件土地を高度に利用する必要に迫られており、現に申立人の両隣の隣人達(書店と醤油店)もそれぞれすでに従来の木造店舗を取りこわして新たに鉄筋三階建のビルをすでに建築中である。

(5)  申立人は本件土地上に木造の店舗を取りこわして鉄筋三階建の店舗の建築を希望し、これの計画をしているが、相手方との間で借地条件の変更につき協議が調わない。

3  以上のように認められ、この事実によると、本件は附近の土地の利用状況の変化等により現に借地権を設定するにおいては堅固建物の所有を目的とすることを相当とするに至つた場合に当ると認むべきである。

なるほど、右事実によると本件防火地域の指定がなされたのは、申立人が本件賃借権を設定した日以前であることがわかるけれども、この設定当時この指定のされていることを申立人において知つていたことを認むべき資料はないし、また申立人は前記のような経緯で本件土地(を含む土地)を賃借し、その後本件土地附近一帯が商店街として発展しつつあること、道路拡張によりこれらの土地や店舗が一部切り取られることになつていること等は前記のとおりであるから、本件土地につき附近の土地の利用状況の変化等により契約当時と異り現に借地権を設定するにおいては堅固建物の築造を相当とするに至つたものと認めるに支障はない。

4  相手方は、本件において本件申立を権利の濫用であるとか、本件借地条件の変更については相当性がないとか主張するが、右認定事実に徴してその理由のないことは明らかである。

5  右の次第で、本件申立は理由ありとして認容すべきであるので、進んで鑑定委員会の意見を徴し、本件における附随裁判について考えるに、まず、前認定の事実、申立人が予定計画している堅固建物の規模、構造等、その他の事情を考慮して別紙(二)記載の本件借地権の借地条件のうちその存続期間を「この裁判確定の日から五〇年」と変更し、次に前同様前記認定事実および土地利用の高度化によつてうける申立人の利益、地上建物が堅固化することによつてうける相手方の不利益等その他の事情を勘案してその借賃の金額を一ケ月二万円に変更し、なお、前同様前記認定の事実、変更された右の存続期間、借賃の金額、本件土地の更地価格、本件土地の借地権の価格の借地条件変更による変動等その他諸般の事情を参酌して申立人に対し相手方に対する財産上の一時給付金として一二五万円の支払を命ずることが当事者双方の利害の調整をはかるために相当であると考えられる。

6  よつて、主文のとおり決定する。

(別紙)

(一) 目的土地の表示

鳥取市若桜町三五番地

宅地 一五九m2六六(四八坪三〇)(本件乙第三号証測量図中のC、D、H、I、G、F、E、Cの各点を順次結ぶ直線によつて囲まれた部分の宅地)

(二) 借地権の表示

(1) 昭和三五年七月一日付土地賃貸借契約に基づく非堅固建物の所有を目的とする右(一)の土地に対する賃借権

(2) 存続期間の定め、右契約の日から五年(ただし、この存続期間は借地法第二条、第一一条の各規定により当然同日から三〇年となる)

(3) 借賃 一ケ月九、〇〇〇円(ただし、右契約の日から昭和四〇年六月三〇日までは一ケ月五、〇〇〇円)、毎月二五日限りその月分の借賃を支払う。

以上

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