大判例

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鳥取地方裁判所 昭和44年(カ)1号 判決

再審原告 景田百治

右訴訟代理人弁護士 馬渕分也

再審被告 有限会社菊水旅館

右代表者代表取締役 前田岩一

右訴訟代理人弁護士 片山義雄

主文

本件再審の訴は、いずれもこれを却下する。

再審の訴訟費用は再審原告の負担とする。

事実

第一、当事者の求める裁判

(再審原告)

一、鳥取地方裁判所が同庁昭和三八年(レ)第二号飲食代金請求控訴事件につき昭和三九年九月三日言渡した確定判決および同裁判所が同庁昭和四〇年(カ)第一号飲食代金請求再審事件について昭和四三年五月一〇日言渡した確定判決は、いずれもこれを取消す。

二、再審被告の請求を棄却する。

三、訴訟費用は再審被告の負担とする。

(再審被告)

一、再審原告の訴を棄却する。

二、訴訟費用は再審原告の負担とする。

第二、当事者の主張

(再審原告)

一、鳥取地方裁判所は昭和三八年(レ)第二号飲食代金請求控訴事件につき控訴棄却の判決を言渡し、再審原告はこれに対し上告したが上告棄却となり、その後右控訴棄却の判決は確定した。

二、そこで本件再審原告は右控訴棄却の判決の取消しを求めるべく鳥取地方裁判所に再審の訴を提起し、同裁判所は同庁昭和四〇年(カ)第一号事件として審理した結果、再審原告敗訴の判決を言渡し、これに対し再審原告は広島高等裁判所松江支部へ控訴を提起したところ、鳥取地方裁判所は右控訴は上告と解すべきものとしたうえ、上告却下の決定をしたので、これに対し再審原告は即時抗告を申立てたが、その後前記再審原告敗訴の判決は確定した。

三、しかし前記二つの確定判決には、いずれも、次のような再審事由がある。

(1) 再審原告が再審被告に対して負担している飲食代金債務は民法一七四条四号に該当するから、既に時効により消滅している旨主張したにも拘わらず、その点について何らの判断も示していないから、民事訴訟法四二〇条一項九号所定の判断遺脱がある。

(2) 再審原告の再審被告方における宿泊、飲食の行為は商行為でなく、その代金債務は民法一七四条四号に該当するから、その遅延損害金は民事法定利率(年五分)を適用されるべきなのに、民事行為か商事行為かに付き何らの理由も付さず商事法定利率(年六分)を適用したのは、同法四二〇条一項九号所定の判断遺脱に該当すると共に法の適用を誤った違法がある。

(再審被告)

再審原告の主張一、二はいずれも認めるが、同三はすべて否認する。

第三、証拠≪省略≫

理由

第一、まず本件再審の訴が法定の期間内に提起されたものであるか否かについて、職権をもって調査するに、

一、再審原告の主張一、二はいずれも当事者間に争いない。

二、そこで鳥取地方裁判所が同庁昭和三八年(レ)第二号飲食代金請求控訴事件につき言渡した控訴棄却の判決(以下昭和三八年(レ)第二号判決という)および同裁判所が同庁昭和四〇年(カ)第一号飲食代金請求再審事件について言渡した再審の訴を却下する判決(以下昭和四〇年(カ)第一号判決という)の各確定日付を検討してみるに、

(1)  一件記録によれば再審原告は昭和三八年(レ)第二号判決に対して広島高等裁判所に上告し、同裁判所は昭和三九年一二月一五日上告棄却の判決を言渡し、再審原告は更にこれに対し最高裁判所へ特別上告したが、上告棄却の判決を言渡された事実が認められる。右事実によれば、広島高等裁判所が上告審として判決を言渡した昭和三九年一二月一五日をもって昭和三八年(レ)第二号判決は確定したというべきである。

(2)  一件記録によれば再審原告は昭和四〇年(カ)第一号判決に対して、鳥取地方裁判所に、広島高等裁判所松江支部宛の控訴状を提出し、鳥取地方裁判所は右上訴を上告として取扱い、上告理由書不提出を理由に決定で上告を却下し、これに対して再審原告は広島高等裁判所に即時抗告を申立てたところ、同裁判所は決定で抗告を棄却し、同決定はその正本を昭和四四年二月一七日抗告人訴訟代理人馬渕分也に郵便で発送して告知され、更に再審原告は最高裁判所に対して再抗告を申立てたが、同裁判所はこれを特別抗告の申立てと解したうえ決定で抗告を却下した事実が認められる。右事実によれば、昭和四〇年(カ)第一号判決は、広島高等裁判所の決定正本が郵便で抗告人訴訟代理人馬渕分也に発送された昭和四四年二月一七日をもって確定したというべきである。

三、ところで再審原告は、再審事由として民事訴訟法四二〇条一項九号所定の判断遺脱を主張するものであり、右再審事由は当事者が判決正本の送達を受け、これを一読すれば容易に覚知し得るものであるから、特段の事情のない限り、判決正本の送達を受けた時に、右再審事由の存在を知ったものと解すべきである。一件記録中の当該各郵便送達報告書によれば、昭和三八年(レ)第二号判決の正本は昭和三九年九月八日控訴人訴訟代理人馬渕分也に、昭和四〇年(カ)第一号判決の正本は昭和四三年五月一二日再審原告訴訟代理人馬渕分也に、それぞれ送達されている事実が認められる。右事実によれば、再審原告は右各送達のあった当時、すなわち、右各判決が前判示のようにいずれも確定する以前において、それぞれの再審事由があることを知ったものというべきであり、これが認定を妨げる特段の事情は認められない。しかして民事訴訟法四二〇条一項九号所定の判断遺脱を再審事由とする場合、同法四二四条一項所定の三〇日間の不変期間は判決確定の日から起算するものと解すべきところ、本件再審の訴は、昭和三八年(レ)第二号判決につきその確定日たる昭和三九年一二月一五日から、また昭和四〇年(カ)第一号判決についてはその確定日たる昭和四四年二月一七日から、それぞれ三〇日を経過した後の昭和四四年五月一四日に提起されたものであることは一件記録上明らかであるから、本件再審の訴はいずれも不適法たるを免れない。

第二、よって本件再審の訴は、本案請求の内容について判断するまでもなく、不適法なものとして却下すべく、訴訟費用の負担につき同法八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 土井仁臣 中村紘毅 裁判長裁判官山内敏彦は転任のため署名押印することができない。裁判官 土井仁臣)

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