大判例

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鹿児島地方裁判所 昭和38年(行)3号 判決

原告 山口四郎

被告 鹿児島市長

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告の負担とする。

事実

原告は「被告が原告に対し昭和三八年二月二三日、同日付清一四五号通知書をもつてなした無許可による汚物取扱業の禁止処分を取消す。訴訟費用は被告の負担とする。」との判決を求め、つぎのとおりのべた。

(請求原因)

一、訴外鳥越満男は昭和三四年九月被告から汚物取扱業の許可をうけ(許可期間五箇年)、その際、従業員として原告および同訴外人の養子である訴外鳥越重治を使用できる許可を得た。(汚物取扱業者はその許可された従業員の数の汚物取扱車輌を使用することが許されていた。原告の鑑札番号は第一三九号である。)

二、原告は被告から汚物取扱業の許可はうけていないが、右従業員鑑札にもとずき、訴外鳥越満男の従業員としてその業務に従事していたところ、昭和三八年二月二三日清一四五号の書面で被告は原告に対し、鹿児島市汚物取扱業許可を与えてないから無許可業者として業務を禁止することを通知した。

しかし原告は被告からこのような処分をうける理由はない。たとえあるとしても、右処分をするに際し、原告の弁明および有利な証拠提出の機会を与えなかつたので、手続に瑕疵があるし、また右処分当時の鹿児島市長は平瀬實武であるにかかわらずその通知書に平瀬實実と記載してあるから、右処分の通知にも瑕疵がある。

三、そこで原告は被告に対し、右禁止処分の取消を求める。

(被告の主張に対する答弁)

原告が独立して汚物取扱業を営んだ事実はない。訴外鳥越満男が老齢でその業を行うことができなくなつたため、昭和三五年四月頃から原告および訴外鳥越重治が各自訴外鳥越満男の従業員として運転していた汚物汲取車輌についてその経営をまかされていたものである。

被告訴訟代理人は「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、つぎのとおりのべた。

一、請求原因第一項、および第二項中原告が被告から汚物取扱業の許可をうけていないこと、被告が原告主張の日時に、その主張の処分をし、その主張の日に右処分の通知をしたことは認める。第二項その余の事実は争う。

二、被告は原告に対し、汚物取扱業の許可をあたえたことがない。しかるに原告が汚物取扱業を営んでいるので警告のため、本件処分をしたものである。

なお原告は無許可業者であるから清掃法第一五条第六項に規定する弁明や有利な証拠の提出の機会をあたえる必要はなく、また右処分の通知書に鹿児島市長平瀬實実と記載されているとしても、右処分が鹿児島市長平瀬實武によつてなされた処分であることが一見して分る筈である。

(証拠省略)

理由

汚物取扱業が特別清掃地域内においてはその地域の市町村長の許可をうけなければ行うことができないことは清掃法第一五条第一項の規定するところであり、原告が右許可をうけた汚物取扱業者でないことは原告の自認するところである。してみるとこのような許可をうけないものに対してされた本件営業禁止行為は単に違法な原告の営業行為をなお将来に向つてすることに対する警告的な意味を有するにすぎないものであつて原告から新たに権利を剥奪し、または同人に対し義務を課するというような法的効果を有するものでもなく、かつまた原告に対する権利侵害の可能性を有する公権力の行使ともいえないものであり、従つてかかる行政行為はその取消を求める利益のないのは勿論、これを取消しても何等実効性のないもので抗告訴訟の対象となる行政処分ということのできないものである。

そうだとすれば、本件営業禁止処分の取消を求める訴は、抗告訴訟の対象である行政処分を欠くから不適法として却下すべきである。

よつて訴訟費用につき行政事件訴訟法第七条、民事訴訟法第八九条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 宮本勝美 早井博昭 保沢末良)

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